WBSは誰がどこまで作るべきか

5年前「炎上プロジェクトから学ぶセミナー」というタイトルのプロマネ向けの講習を友人の会社と共同で開催し、それからだいぶ経ちました。それ以来私は、参加者のアンケートなどを基に「より効果の出るテーマは何か」と考えてきました。その結論の一つが「WBSの作成」です。前回の記事で「なぜWBSを作成しなければならないか」について述べましたが、WBSは簡単そうに見えるためか、きちんと作り方を教わることも無いまま作らされることが多いように感じています。そこで、私なりのWBSの作り方を書き留めておきたいと思います。あくまでも私のやり方ですのでこれが正しいやり方というわけではありませんが、必要としている方にとって少しでも参考になればと思っております。

さて、WBSの書き方・作り方の前に、「誰がWBSを作るべきか」という問いがあります。「WBSを作れ」と言われてもその必要性を認識していなかったり、仮に必要性を認識していたとしても(以前お伝えしたように)「見える化」しないタイプの人は全く作らないか、なんとか誰かに作らせて少なくとも自分は作らないで済まそうとするのではないでしょうか。

しかし、今のところ私の考えでは、複数の会社が関わるならそれぞれの会社で、複数の部門が関わるならそれぞれの部門で作成すべきです。もっと分かりやすく言えば、全体で1つではなく、管理の単位(便宜的にチームと呼びます。きっと組織の文化によって呼称は異なるでしょう。)それぞれに1つずつのWBSがあるべきです。(もちろん社内の小さなプロジェクトなら1つあれば充分ですね。)そして、チームリーダーの責任でWBSを作るのが良いと考えます。何故ならWBSは、自分のチームが作らなければならない、あるいは実施しなければならないことをまさに網羅的に表現したものだからです。

だから、自分たちの作るべき成果物、やるべき項目を漏れなく列挙し、実作業の責任者としてそれをスケジュール化します。もちろん他のチームと連携しなければならない項目についてはマイルストーンの摺り合わせも必要ですが、基本的には他のチームの作業はそのチームが管理すべきことと考えます。だから他チームの作業そのものを項目化するのではなく、作業に係る他チームとのやり取りを項目化して、期日を両者で合意すると良いでしょう。

次に「どの粒度まで表現すべきか」という問いがあります。これは私も良く訊かれますし、他の人が訊かれているのを耳にしたこともあります。それだけ答えを探してもなかなか見つからない問いなのだと思います。中にはあらゆる作業、あらゆる成果物を細目に落とすべきといったアドバイスもネット上で見かけます。私もこれといった答えを持っているわけではないのですが、これだけは言えます。それは「管理する人が管理しやすい粒度で」ということです。項目が大まか過ぎて日々の状況把握に耐えられないようではいけないし、逆に細か過ぎて全体が俯瞰できなくなったりメンテナンスの負荷ばかり高くなっても本末転倒だからです。最初から完璧なWBSは作れなくても、慣れてくればその辺りのサジ加減は会得できると思います。

また、対象のプロジェクトや、そのプロジェクトを実施する組織によってその管理のやり方も異なってくるでしょうから、画一的な「正解」に凝り固まらない方が良いのではないでしょうか。WBSをきれいに作ることが目的ではないし、まして管理することが目的でもないのです。まったく初めての取組みであって勝手が分からないようなケースは本当に検討事項の一つ一つまで細かくしないと危ないかもしれないし、類似のプロジェクトを経験していればそこまで細かいと冗長さを感じることもあるでしょう。そこはWBSを利用する本来の目的に合わせて柔軟に粒度を調節できることが望ましいと考えています。

より具体的な作り方に関する問いについては次回に続きます。



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