「長良川おんぱく」に学ぶビジネスの作り方


先週の三連休は、いつもお世話になっているITコミュニティ「JSDG」の全国大会が「岐阜から発信するITと仲間づくり」というテーマで開催され、私も会員として参加してきました。研修のアジェンダは以下の通りです。

  • 基調講演「岐阜長良川のほとりから発信しつづけてきたこと」NPO法人ORGAN代表 蒲勇介さん
  • 会員講演「全国の鵜飼事業に見る地域活性化のアプローチ」JSDG会員・森松さん(ゲスト:結の舟代表 平工顕太郎さん)
  • 招待講演1「インターネットと音楽」プレスサポート・NEW VINTAGE RECORDS代表 小島眞さん
  • 招待講演2「意外と稼げるロンドン地下鉄バスキング」ギタリスト 土門秀明さん

大会ロゴ(右)と鵜飼の切り絵

会場に飾られた切り絵も素敵でした


会自体はオープンな組織であるものの、研修会の内容によっては他言無用を参加条件とするケースもあります。今回の全国大会もそれに該当するものでしたが、基調講演だけは実際にUstreamでも中継されましたし、そこだけはオープンにして良いという幹事の許可も頂ましたので、ここに総括してみたいと思います。

まず今大会全体を通しての感想ですが、一応のテーマは掲げられているものの、それとは別にどの講演についても聴きながら「これってビジネスを生み出すプロセスだよなぁ」と感じました。基調講演では「長良川おんぱく」をコーディネートしているNPO法人ORGAN代表・蒲さんが「おんぱく」に辿り着くまでの試行錯誤についてお話ししてくださいました。

実は、他の講演も「ビジネスが軌道に乗るまでの試行錯誤」という要素が含まれており、参考になっただけでなくたいへん励まされ勇気付けられました。

私がこのように独立して会社をやっていると「不安はないんですか?」と訊かれることがよくあります。ビジネスを始める多くの不安は恐らく「失敗したらどうしよう」というもので、特に新しいことを始めようとした場合には、うまく行くかどうかも分からないアイデアに投資だとしても大金をつぎ込むのは全てを失う可能性を考えると勇気がいるものです。

そこで、そのリスクをいかに減らすかということが主要な課題になりますが、ある書籍によると既存の主要な事業を行いつつ全体の10%程度の資源を新規事業に投下するというのが良いようですが、その「ちょっとだけ試せる」という場が失敗のリスクを減らしつつ新しい取り組みに挑戦するための環境として必要とされています。それこそチャレンジしたい人が気軽にチャレンジできる場。「長良川おんぱく」もそんなビジネスインフラの一つとして企画・運営されています。

当社でも2年前にITサービスのプロトタイピングを行うサービスをトライアルで実施しました。ITサービスは一般的に他の産業と比べると初期投資が少ない業種と言われていますが、それでもシステムを構築するにはそれなりの投資が必要となってきます。特に新しいサービスというのはアイデア段階でベンダーに話を持っていってしまうと、(ベンダーに要件定義が出来る人がいればよいですが、そうでない場合は)要件定義に時間とお金がかかった上に、出来上がったシステムが使い物にならないという悲劇は良く耳に入ってきます。

そこで、当社がお客さまのアイデアをプロトタイピングによってより鮮明にすることで、委託されたベンダーにとっても本業の開発以外のところでリソースを投下する必要がなくなり、結果的にコストも下がって委託側も嬉しいという状況が生まれるのです。プロトタイピングはコンサルティングの一環としてオンライン/オフラインの打合せを繰り返しながらアイデアを施策に盛り込むというサイクルで進めていきます。最終的には開発ベンダーにつなぎますが、あるいはプロトタイピングを経た結果として投資をしないという判断もあるでしょう。このサービスも「ちょっとだけ試せる」場として、また意思決定のツールとして利用していただければ光栄です。

長良川おんぱく
http://nagaragawa.onpaku.asia/

NPO法人ORGAN
http://www.organ.jp/

夜は参加者や講演者の皆さんと共に鵜飼を楽しみました。結の舟代表の平工さんだけはお仕事の都合で帰られましたが、今年もご挨拶できてよかったです。ますますのご活躍を!

結の舟
http://yuinofune.com/

横浜の中華街新年会にてIT業界を考えた


本日(校正している間に日付が変わってしまいましたが)、毎年恒例、JSDGの中華街新年会に参加してきました。去年はエントリーしておきながら(確か体調を崩してだったと記憶しています)ドタキャンしてしまったのですが、今年は無事に参加することが出来ました。しかも今年は中華街新年会としては過去最高の33名の参加がありました。

いつも色んな方と話が出来て刺激になるのですが、今回はたまたま隣席にいらしたITのコンサルタントとIT人材の話になりました。コの業界ではよく「ユーザ企業」「ベンダ企業」という呼び方がありますが、前者はITを利活用する企業で事業会社とも呼ばれることがあります。そして後者はITのシステムやサービスを提供する企業ということになりますが、アメリカ合衆国ではその従事者の割合が3:1なのに対し、日本では真逆の1:3であるという統計に基づく事実について教えていただきました。

その方に言わせれば「これじゃあ日本は勝てないよね」「技術者をユーザ企業に戻したい」ということになるのですが、少なくとも日本では過去に事業会社が情報システム部門を子会社化して切り離した経緯があり、その弊害が顕著であることは私自身も現場に出て肌で感じております。それに気付いている企業は既に内製化に舵を切っており、一度子会社化したシステム部門を本体に吸収した企業も知っています。以前も書いたかもしれませんが、そもそもSIというビジネスがもはやWin-Winの構造になっていないため、全てのユーザ企業が舵を切ればSIビジネスは消えるでしょう。そして舵を切らないユーザ企業はSIベンダと共に衰退していくと想像されます。

私自身もSIの仕事をしたことがありますし、SIの仕事をしている知り合いもたくさんいます。なのでなかなかこんな話はして来なかったですし出来ませんでした。でも、今日、このように話を伺い、きちんと考えておられる方がいると知って嬉しく思いました。

私は10年ほど前に、とある技術者コミュニティーに顔を出していたことがあり(数回限りでしたが)、とあるネットの記事を題材にこのテーマについて議論を交わしたことがあります。当時の私はまだバリバリの技術志向でしたから、アジャイルかウォーターフォールかという開発手法の話題として捉えていました。ところが、開発手法はビジネスモデルとも絶妙にリンクしていて、議論を交わしているうちにSIモデルはいつか終わるんだという認識を持ったものです。それ以来、どのようにこの業界でビジネスをやっていくかということを自分なりに考えてきました。

まだ明確な答えは見えていませんが、時々刻々と変化していくIT環境に合わせて、直接的であれ間接的であれ事業会社のサポートを行っていきたいと考えてきましたし、今もそのように考えています。内製化をしたいという企業があれば、それをうまくやるための方法を一緒に考えていきたいです。人とITとをつなぐ・・・ここは必ず押さえていきたいと思います。

(参考)
スルガ銀-IBM裁判から垣間見えた“SI時代の終焉”
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20120507/394881/

鵜飼船の若手船頭に学ぶ


一昨日19日にJSDGの中部研修会が開催され、参加してきました。今回は例年開催している長良川の鵜飼いとセットになっている研修会で、石金という旅館の一室を借りて行われました。(もちろんその旅館に宿泊します。)今年で5回目とのことですが、私は去年が初参加で今回は2回目の参加でした。

研修会では鵜飼船の船頭である平工顕太郎(ひらく・けんたろう)さんを招いて、インタビュー形式で鵜飼の話やこの世界に入ったいきさつなどを伺いました。船頭というのは簡単な仕事に見えて細かい気遣いを求められ、最初は厳しい指導を受けたそうですが、自分の舟を持つようになった頃からそういうのは徐々に少なくなっていったそうです。何より船頭としてのスキルは教わって覚えるものではなく、実際にやって解ることが大事なのだとか。差し詰めITの世界で言ったら自分のサーバーを持つようなイメージでしょうか。また、地元を一旦離れて外から眺めて見た方がその良さを再認識しやすく、仕事に対するモチベーションもより高まるようです。川と共に生きる覚悟を決めた男の姿をまざまざと見せつけられました。

平工さんは来月から木製の漁船に観光客を乗せて「結の舟(ゆいのふね)」という体験型ツアーを始めるのですが、私も企画に携わっていて、翌日、他のスタッフと共に体験乗船してきました。最終チェックを行いたいとのことで駆り出されたのですが、情報システムで言うところのユーザーレビューあるいは受入テストに当たるでしょうか。例えば、流れの静かなところで手ほどきを受けながら操船の体験をしたり、平工さんが日頃から漁で使っている網を投げる体験をしたりといった内容です。操船も竿がなかなか川底に刺さらず(川底の石の表面を滑ってしまう)、投網もうまく網が広がらずに束のまま放り投げてしまったり、「なるほど覚えると分かるは違うんだな」ということを改めて学びました。

川には危険がいっぱいあり、先日も小学生が事故に遭ったりして怖いと思う方も多いと思いますが、危険だから近づかないという対処は却って対象をブラックボックス化してしまいます。それよりは具体的にどのような危険があり、どのように対処すればよいかということを学んだ上で遊ぶことが大切かなと思います。河原を歩く時に転倒事故が多いそうなのですが、転倒しないためには浮石を踏まないようにするとか、今回ライフジャケットを着用したのですが、流された時には立ち泳ぎしないでラッコのように浮いて頭を川上に向けて流れに任せるなど、話で聴いただけでは分かりづらいことを体験を通して学ぶことができます。

尚、この体験ツアーは対象を小学1年生以上をとしたいとおっしゃっており、この夏休みに岐阜方面に行かれる方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。この事業を通してより多くの人に川に親しんでもらいたいと思うのと同時に、平工さんの今後のご発展とご活躍を願って止みません。

石金
http://www.ishikin.co.jp/

結の舟
http://yuifune.wix.com/yuino-fune

 

10年後のワークスタイルを考える


昨日JSDGの東京ミニ研修会が開催され、参加してきました。今回は久しぶりに私が企画を担当させていただきまして、「これからの働き方を考える」というタイトルでグループディスカッションを行いました。

研修会の数日前に申込者のリストを見て、私は最年少は免れたもののほぼ最年少に近く、果たして目上の方ばかりを相手にこんな話をしていいのかと正直思いました。グループ分けも最初は単純に分ければ良いかなと思っていましたが、他の幹事の方からどういうグループ分けにしますかと問われて、せっかくだから世代別にしましょうということになり、事前にザックリとグループ分けしてもらいました。(グループ番号が記載された名札を用意してくださったので助かりました。その段取りに感謝。)

本編の構成は私がテーマについて話をして続いてそのテーマでディスカッションするという形で、それを2つのテーマで行いました。前半のテーマは過去から現在のワークスタイルを棚卸する狙いで、私自身のワークスタイルの話と職務特性モデルの話をしました。これは一昨年金沢で「雇われないシスアド」というタイトルでICの事をプレゼンした時の題材を借りてきて、職務特性モデルに照らして今の自分の仕事はどんな点で満足しているかあるいは不満かということをシェアしました。この日参加された方々は全体的に満足度が高かったのが印象的でしたが、グループによって(つまり世代によって)指標の捉え方が異なっていて興味深かったです。

後半のテーマは「ワークシフト」という書籍(丁度著者の方が来日しているそうです!)を紹介し、10年後の未来のワークスタイルについて議論していただきました。10年後ってなかなか想像しにくいですが、それほど遠くない未来だと思いませんか。ただ、この話題は正解も無ければ結論を出さなければいけないようなものでなく、著者もあとがきで書いているように、みんなでこういったことを議論することが大事なんだと思います。

知らない本に出会えるビブリオバトル


去る15日にJSDGの東京ミニ研修会が開催され、参加してきました。今回の企画は事例発表でもワークショップでもなく、JSDG初の「ビブリオバトル」。ビブリオバトルというのは各自自分の好きな本についてプレゼンテーションを行い、どの本が一番読みたくなったかという観点の投票によりチャンピオンを決定するというものです。私もビブリオバトルという名前は聞いたことがあった程度でイメージがつかず今回は発表は敬遠したのですが、参加者の皆さんの発表がとても面白く、次回は私も発表してみたいと思いました。

今回参加者13名に対して発表者9名で、当然IT業界で働く方ばかりなのですが、持参された本は意外と文学などITとは関係のないテーマの本ばかりでした。発表者は5分(タイマーで管理されてました!)発表したあと簡単な質疑応答を行い、途中休憩をはさみながら9名が順次発表していきました。そして最後に投票と集計を行い、優勝者には賞状が贈られました。

単に本の紹介をしたのでは面白くなく、いかに読みたいと思わせるかを考えるところが面白いと思いました。中には本の内容ではなく本の装丁についてプレゼンテーションした方もおり、読みたいではなく持ちたいと思わせる本を紹介するという発想もありなのだなと、なにもルールに縛られることなく自分の好きな観点でアピールして良いのだなという点が面白いと思いました。

また、小説などはネタバレするかしないかギリギリのところの判断が問われ、ネタバレしてしまえば読まなくてもいいやって思うし、あまり披瀝しないと魅力が伝わらなかったりするので、その辺のさじ加減は難しいですね。でもそれぞれの発表者が熱い思いを語るのを聴くにつけ、本の世界にぐいっと引き込まれていく体験も得難いものです。