「世界で一番やさしい会議の教科書」榊巻亮 著

ここ数年で「~の教科書」というタイトルの書籍が増えてきた気がします。「教科書」という響きからは学校の授業で使う教材をイメージしてしまうので、個人的には入門書の意味合いで教科書と命名するのはいかがなものかと思っております。なぜなら、教科書は浅いけれども必要なことは万遍無く盛り込まれていますが、「教科書」というタイトルが付けられた書籍には必ずしもそうではないものもあるからです。とはいえ、本書は社会人になりたての方々に会議の心得を身に着けさせるための適切なガイドブックと言えるでしょう。

皆さんは会議は好きでしょうか。おそらく出席して良かったと思える会議とそうではない会議があることでしょう。無駄だなぁと思う会議はいろいろありますが、「報告事項を報告者が口頭で発表し、参加者一人一人が手帳にメモする」というのがその最たるものかもしれません。そんなものは資料化して配布すれば済みます。また、「議事録を次回の冒頭で読み上げる」というのもあります。これは開催頻度にも依りますが、例えば1か月前の議事録を次の会議で確認するというのではさすがにスピード感がありませんし、思い出すのも疲れます。議事録は開催直後に配布して認識を合わせておくべきだと思います。

私はどれだけの会議に出席したかは把握していませんが、社会人1年目の時に出席した会議が原体験となっているような気がします。当時はPCが一人一台という状況では(少なくともその職場では)なかったですし、会議もPC+プロジェクタではなくホワイトボード(感熱紙にプリントはできる)を使っていました。会議の「いろは」も分かっていませんでしたが、誰が進行するかによって会議の質も異なっているということは分からないなりにも感じていました。会議の進行については師匠から種々の心得を叩き込まれまして、いつの間にか難なく会議をこなせるようになってきました。進行だけでなく、本書の前半に書かれているような立場で会議の成果を何とか見える形にしようとしてきました。

そんなこともあり、上で述べたような経験を通して私の会議術というのは磨きをかけて行ったものですが、一方では私が身に着けたことをどのように若い人たちに伝えたらよいかという課題があります。本書はその観点でも参考になる部分が多くありました。というのも本書では、「確認するファシリテーション」⇒「書くファシリテーション」⇒「隠れないファシリテーション」⇒「準備するファシリテーション」という風に徐々にステップアップできるように組み立てられているからです。この順序に従うことで、読者ひとりひとりがご自身の成熟度に合わせて取組むことができると思います。

ファシリテーションというといわゆるフレームワークやファシリテーショングラフィックのようなものを連想される方も多いと思いますが、そのような高度なものではありません。会議に参加する心構えを変えるだけなのですが、すぐに効果が出ることが期待できる内容だと感じました。会議を効率化したい、効果が出るようにしたいと思われている、あるいは、そのようなテーマで人に教えたいと思われている方には是非読んでいただきたいです。


 書名:世界で一番やさしい会議の教科書
 著者:榊巻亮
 発行:日経BP社/2015年12月15日
 ISBN:978-4-8222-7178-7