ワークとライフはどこでバランスするか?

22日付日経新聞の5面に
興味深いインタビュー記事が
ありましたのでご紹介します。
インタビュイーは
元国連事務次長の明石康さん。
在任時には国際ニュースなどで
メディアにも度々登場していたので
顔を見れば「ああ」と思い出す方も
多いのではないでしょうか。

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強い組織に見られる性質

リーダーシップというテーマだけで興味を持つ方は多くいらっしゃると思いますが、今回ご紹介する本はちょっと趣が異なっています。というのも、本書はアメリカ海軍の士官候補生のための書物だからです。ですので、そのまま日本の企業に当てはめようと思うと多少無理があります。

とはいうものの、エッセンスを抽出すると、実は日本の企業におけるリーダー(あるいはマネージャー)でも教訓にすべき原則がたくさん述べられているという点は特筆すべきでしょう。特にラインのマネジメントにおいて気づかされる点は多いです。

本書は様々な切り口で書かれており、一言で表現するのは難しいのですが、私が特に興味を抱いたのは次の点です。それはリーダーは次のような態度でいるべきだという勧めです。

  1. 健全な懐疑主義
    一言で言うと、他人の意見を鵜呑みにしないということ。本当にそうかどうか自分の目で確かめるまで判断を保留するという態度です。それは「もちろん」「当然」「常識」「伝統」「慣例」などを疑うということでもあります。
  2. 客観性
    前項の内容と絡めると、自分自身の客観性を疑うということでもあります。つまり、自分が何かを判断するとき、あるいは観察するとき、どうしても主観的になってしまう。逆説的ですが、自分が客観的ではないと悟るところから自分の客観性が始まるのです。
  3. 変化への即応性
    懐疑的な態度であらゆることを疑いつつも、新たに客観的な証拠が示された場合にはそれを即座に受け入れるということです。現在のすべてに反対するというのは結局何も変えようとしないに等しいのです。

また、本書はリーダーシップについてというよりは、組織論について書かれた本と呼ぶのが相応しいかもしれません。そう考えると次のような「組織の原則」という項目は実に今の日本の企業においても参考にすべきでしょう。いくつか要約して列挙すると、

  • どんなタスクも2つのグループまたは2人以上に割り当ててはならない
  • 組織のメンバーは誰でも、自分が誰に報告するか、誰が自分に報告するか、を知らなければならない
  • 組織のメンバーは誰でも、2人以上の監督者に報告してはならない
  • 誰でも効果的に調整かつ指令することができる範囲以上のグループまたは個人を、直接報告関係にある部下として持ってはならない
  • 細かな手続きよりもむしろ、ポリシー(方針)によって統制を行うべきである

などなどです。軍隊がそうであるように企業においても組織構造がシンプルで、全てのメンバーが主体的に動く組織は強いのです。
――――
書名:リーダーシップ
著者:アメリカ海軍協会
発行:生産性出版/1981年10月24日
ISBN:978-4-8201-1916-6


『サイバー攻撃に備えはあるか』

昨日8日付及び本日9日付けの日経新聞の経済教室欄に「サイバー攻撃に備えはあるか」というテーマで記事が書かれており、興味深かったのでご紹介したいと思います。

まずは8日付の記事です。まずはサイバー攻撃のパターンの変遷について。以前はコンピュータ・ウィルスをばら撒く様な不特定多数の被害をもたらすタイプの攻撃が主流だったのに対して、最近は特定の企業や団体に対する攻撃が増えているそうです。特定の標的を持つということは、攻撃に目的があるということでもあり、目的があるということはそれを達成するためにあらゆる手段を用いてくることを考えると、狙われたらアウトという心積もりで準備をした方が良いかもしれません。

一方、9日付の記事では、「サイバーテロの問題は何故難しいか」という問いを立て、セキュリティ対策に関するインセンティブという切り口で見解が述べられています。適切な対策が施されるかどうかがインセンティブに依存しています。なぜならセキュリティ対策というのは一般的に費用・労力がかかるからです。また、どこまで対策を施せばよいかは攻撃側のインセンティブにかかっています。攻撃者にとってメリットがなければ執拗に攻撃されないからです。

また、ソフトウェアにおけるセキュリティ機能の特徴として挙げられているのが「肉を切らせて骨を裁つ」方式だということです。例えば、侵入は許可するが、情報の改ざんや漏洩等の攻撃は完遂させないといえば分かり易いでしょうか。記事の中では地震対策に喩えて、震度6には耐えたいが震度7が来たら諦めるという考え方をしていると、全体として対策は弱くなってしまうと警鐘を鳴らしています。

しかし、一つの企業や団体が個別にセキュリティ対策を行っていくのには限界があるので、地震対策と同様に国や地域、また業界全体での取組みの必要性も示されています。そして、日本でなされている取組みを紹介し、サイバー攻撃対策分野における技術革新に期待を寄せて締めくくっています。

昔からセキュリティ分野は「イタチごっこ」と言われて来ています。対策には費用及び労力がかかるので、一定の対策をしてしまったら終わりにしてしまいたいという気持ちになります。本当にこの問題に終止符が打てるような技術革新を個人的には待ち望んでいます。