ブランチ事例を発表させていただきました・その3

昨日27日(火)に西新宿にてTOCfEの月例勉強会(通称オンデマンド)に参加いたしました。私は先々月、先月に引き続き、3回シリーズの最終回のブランチ発表をさせていただいたのですが、本当は15~20分程度を想定していたのに、様々なツッコミを頂いて気づいたら50分にもなっていました。他に発表準備をされていた皆さんごめんなさい。

それだけ深い議論が出来たのではないかと思いますが、いろいろと質問や指摘を受けていく中で私自身がまだモヤモヤしていた個所がクリアになってきて、なるほどと思うところが多数ありました。また、される質問によっては答えに窮する場面もあり、そこは私の中で良い考えが浮かばなかったりまとまらないという状況に陥ったためで、そういう時は開き直って逆に「何か良いアイデアありますか?」のように切り返すことが、会話をテンポよく続ける上で大切かなと思いました。

今回のブランチを共有する中で一番勉強になったのは、所属する組織の評価基準や体制(仕組み)が実態に即していない場合に何が起こるかということで、それは「評価基準や体制に合わせるか、もしくは実態に合わせるか」という内部対立が起こるというアドバイスを頂きました。そして、その内部対立を解消できなかったから、結果として主題に掲げたような問題が起きたという指摘も。

確かに特定の個所でスッキリしなかったのは相反するような複数の原因が1つの結果につながっていたからで、どのように対立を解消したのかというところの前提条件がもうひとつ加わればスッキリするんでしょう。そしてその前提条件を導き出すにはクラウドの出番ということになりますね。このテクニックは是非ともマスターしたいと思いました。

続いて、いつもお世話になってるY2研究所の吉田裕美子さんが今企画されているワークショップの検討会を行いました。「こういうストーリーを考えているんだけれども皆さんどう思いますか」という問いかけから始まり、様々な意見が出されました。集まっているメンバーは皆さん論理的に考える方々ですので、建設的な議論が出来て大変有意義でした。

弊社でも今は中断していますが、新人プロマネ向けのワークショップをTOCのツールを取り入れた形でバージョンアップして再開したいと思っていて、この検討会の中で私がまさにイメージしていたようなアイデアが出てたのでとても参考になりました。実現はもうちょっと先になりそうですが、是非ともチャレンジしたいと思います。


「集合知とは何か」西垣通 著

前回採り上げた「2045年問題」とはある意味対極を成す著作です。「2045年問題」はかなり著者の趣味であるSFの色が濃く、コンピュータが知能を持つという話題を提供していましたが、「集合知とは何か」ではその話題を真っ向から否定しています。こちらの著者の西垣氏は本当にコンピュータを専門に研究しておられる方なので、SF的な読み物よりも現実的かつ学問的な内容となっています。

突き詰めていくと「コンピュータとはそもそも何なのか」という起源に遡るのですが、それ自体は本書の論点ではありません。ただ、コンピュータがある情報を入力として、人間の代わりに正確に思考をしてくれる装置として作られたものであり、その一つの形がAI(人工知能)なのだそうです。その背景として「事物を記号であらわし、記号を形式的なルールにもとづいて論理操作することにより、事物についての正確な知がえられる」という論理主義的・形式主義的思想があります。

コンピュータが人間の代わりに問題解決を行う未来、例えば病院に行ったら医師が全く居らずコンピュータが全ての診察と処置を行うような世界、あるいは、裁判所に行ったら弁護士も裁判官も全てコンピュータで、そのコンピュータが即座に判決を下すような世界を想像してみてください。昔の人はコンピュータに専門知識を全て記憶させておけばそういったことが可能であると考えたようですが、実際はそうはなっていません。それはなぜでしょうか。

冒頭に記したように、西垣氏は人間とコンピュータは全く異なる存在であり、コンピュータが知能を持つことは有り得ないとしています。というのも人間が得意なのは「刻々と変化する環境の下で、常識と直観を働かせ、臨機応変に働くことだから」で、これはAIを含めコンピュータがあまり得意ではありません。なのでコンピュータに問題解決を丸投げするのではなく、あくまでも意思決定は人間が行う前提で、その材料となる情報を提供するというのが現在の潮流なのだそうです。

さて、主題に戻りますが、これらを踏まえ、私たちがこれから将来コンピュータやコンピュータを利用した情報社会に何を期待できるのか、あるいは何を期待すべきでないのかということが後半で述べられています。

私たちは兎角「フラットで透明な」社会や組織を望ましいもののように考えがちですが、あるモデルによるシミュレーションの結果によるとそれは却って不安定な社会を招くことになり、逆にある程度の閉鎖性や不透明性がある方が望ましいリーダが生まれ健全な社会が形成されるとしています。

すると望ましい集合知を作るためのカギはコミュニケーションの在り方にあるようです。つまり、何でもかんでもすぐに多数決を取るのではなく、泥臭い対話を重ねて合意形成する方がより良い解決に到達しやすいようです。ソーシャルと言われるネット上のインフラが発達し、そこで形成される意見が多数決で正しい意見のように思われがちですが、必ずしもそれがベストの解ではないということなのですね。


書名:集合知とは何か
副題:ネット時代の知のゆくえ
著者:西垣通
発行:中央公論新社/2013年2月25日
ISBN:978-4-12-102203-5

教育のためのTOC国際認定プログラム2013・最終日

いよいよこの研修も最終日です。最後のツールはアンビシャス・ターゲット・ツリー。私が毎月参加させていただいている勉強会でも事例の少ないツールです。「何でアンビシャス・ターゲット・ツリーの事例発表は少ないんでしょうね?」と半分冗談で質問したこともありましたが、「発表したら実行しなきゃいけなくなっちゃうからじゃない?」みたいな冗談が返ってきたこともありました。

私はこれまでにもアンビシャス・ターゲット・ツリーを教わったことがあったのですが、これまでは全ての中間目標に対応した行動(計画)は必ず書き出さなければいけないと思い込んでいました。ですが、今日の説明では中間目標が具体的にイメージできるレベルの行動として表現されているのであれば、わざわざ行動の欄を記述する必要はないということでした。行動を書き出さなければならないのは、中間目標が抽象的な表現であったり達成できそうかどうかわからないような場合なのだそうです。

ブランチやクラウドと比べると、アンビシャス・ターゲット・ツリーは演習の時間が短く、もうちょっとじっくり取り組みたかったなと思いました。その代わり、講師の方がこれまでより教科書に忠実に進めてくださいましたので、理解は確実にすることはできたのではないかと思います。とはいえ昨日までの三日間は疲れを感じなかったものの、さすがに今日は疲れを自覚しまして、なかなか講師のお話が耳に入ってこなかったのは否定できません。

最後には認定書の授与式があり、TOCfE Inc.会長のKathy女史から認定書が手渡されました。Kathy女史は日本語を話されないので(研修中にお話しされる場合はボランティアの方が通訳されていました)あまりおっしゃってることが聞き取れませんでしたが、感謝の気持ちを込めて私のたどたどしい英語で感謝と決意の言葉をお伝えしました。ちなみに、認定書が予想してたよりもかなりしっかりしたものだったので、それにはちょっと驚いてしまいました。

フィナーレとしてオフィシャルの懇親会が開かれましたが、そこである方に「4日間どうでしたか?」と問われて、とっさに「一言で言えません」としか答えられませんでした。とにかく様々なことを深く深く学びました。もちろん私は仕事の中にTOCの考え方を取り入れていきたいので、これからも練習を重ねて習熟できるように励みたいと思います。この研修に関わってくださった皆さん、お目にかかった皆さん、本当にありがとうございました。


教育のためのTOC国際認定プログラム2013・第3日

研修の三日目、今日はクラウドを学びました。教育のためのTOCと本家TOCで唯一共通しているツールがクラウドだと言われていますが、根本は同じだけれど実はやはりTOCfEの方がよりシンプルに削ぎ落とされています。そして、個人的にはクラウドは一通りのトレーニングを受けていたのですが、これまでやっていたクラウドは本家TOCの方のクラウドだということが分かりました。

これまで何度も対立という言葉を使ってきましたが、単に対立と言っても誰かと誰かの対立(外部対立)を扱うこともあるし、誰かの葛藤(内部対立)を扱うこともあってそれは区別する必要があるということも分かりました。なぜならば、内部対立というのは言ってみれば個人の心の内面の問題であり、アプローチの仕方を工夫しなければならないからでしょう。

TOCでの質問の表現は、それが翻訳に起因するものなのかもしれませんが、多少きついなと思えるところがあり、特に誰かの内部対立を解消しようとしてファシリテーションするためには相当の配慮(相手に寄り添う気持ち)が必要だということも分かりました。これがビジネスの場であったり、あるいは学びたいという人に対するトレーニングの場であればそれほど気にすることでもないんでしょうけどね。なので、ここはTOCという理論だけではなくプラスアルファ他の手法で補った方が(これを理論の実装と表現すると私はしっくりきます)うまく行くケースがあるのではないかと感じました。

あと、これはクラウドに限らないのですが、複数人で実践する場合にファシリテータは愚直に(つまりしつこいくらいに)質問を繰り返すとうまく行くということも分かりました。特に何かの要素を思いつく限り列挙するという場合、2~3個挙がるとその良し悪しきに関わらず安心してしまう傾向があり、そこで質問をやめてしまうと本当は出てきたはずの要素が出てこなくなる可能性があります。なので、60秒くらい待っても何も出てこなくなるまで粘り強くやるというのが重要ですね。

尚、今夜は半オフィシャルの懇親会があり60名ほどのメンバーが集まりましたが、食事もそこそこに各テーブルで内部対立のクラウドが始まりました。途中席替えがあり、最初のグループで作り始めたクラウドは完成できなかったそうですが、後半のグループで途中から見させてもらったクラウドは見事に完成し、解決策を見出すことが出来ました。内部対立のクラウドでしたので、当事者の方は新たな発見があるたびに笑顔が増しておられました。個人的にはこんなにリアルに切実な問題が解決した瞬間を目の当たりにしたのは初めてです。これは大変励みになりました。

「居酒屋の会話」というと重たい気持ちで悩みや愚痴を言い合い、でも日付が変われば元通りというのが常ですが、飲みながら楽しく建設的な議論ができ、しかも場合によっては解決策が生み出せるというのは驚異的ですね。


教育のためのTOC国際認定プログラム2013・第2日

昨日から始まった研修の二日目です。今日も学ぶツールはブランチなのですが、今日は更に発展してCLRというブランチを検証するための手法と、更にはそのブランチが望ましくない状況を表現している場合にその状況を改善するための手法を学びました。

特に前者は、私は何度も聴いたし本でも読んだにも関わらず、なかなか理解できなかったことの一つで、今回実際に演習で実践してみることでようやくおぼろげながら理解に向かって進み始めたといった感触です。その検証の手段とは次のようなものです。

  1. 用語や文章の意味があいまいでないか?
  2. 文章の意味するところが厳密に妥当であるか?
  3. 因果関係がちゃんと成立しているか?
  4. 結果の原因となる要素が不足してないか?

言葉で書くと単純で、なんとなく分かったような気になるのですが、これが難しい。特に複数人で集まっている場合に誰かに質問するのは簡単ですが、逆にそれに答えるのはものすごく難しい。なので、自分一人でブランチを作っているときに検証しようとすると、自分で質問して自分で答えなければならないので難しく感じられるのでしょうね。まあでも、これは慣れていけば身に付きそうな気がしています。

ブランチのカリキュラムは今日で終わりなのですが、実は余録があって、夜にこぞって夕食を囲んだ際に、ある方が付箋紙を提供してくださいまして、課外授業というか延長戦というか場外乱闘というか、自主的にグループワークをやってしまいました。

発端は参加者のある方の何気ない発言に対する「え、それは何で?」というような疑問から、じゃあブランチやろうぜという流れで始まりました。しかも皆さん飲みながらなので厳しいツッコミが出る出る。題材のターゲットとなった方にとっては苦しい局面もあったかもしれませんが、(TOCfEは初めてだという)彼にとっても、ツッコミを入れた方々にとっても今日の内容を復習出来て良い学びの時間となったのではないでしょうか。

このスキルを学んだせいか、帰ってテレビをつけ、流れていたニュースに対して思わずツッコミを入れたくなっている自分に気が付きました。


教育のためのTOC国際認定プログラム2013・第1日

タイトルにあるような研修に今日から参加しています。これは4日間でTOCfEの3つのツールについて一通りの学習を行うもので、今日と明日はそのうちのブランチ(今日はロジック・ブランチとも言ってた)を学びました。

ブランチというのは物事の因果関係を整理して、その対象を理解するためのツールです。私はこれまで単純に原因(Cause)と結果(Effectとおっしゃっていたかな?)を矢印でつなげたものというぐらいにしか理解していませんでしたので、今回ちゃんとしたツールの使い方・考え方を学ぶことが出来ました。

出発点はどうするのかということについて、たまたま質疑応答コーナーで質問されていた方がいたのでメモしておくと、最初に現象を書き出してその原因は何かという風に掘り下げていくパターンと、最初に行動を書き出してその結果どうなるかという風に未来を予想していくパターンと、目的によって使い分けて良いということでした。

どのような粒度でブランチを描いていけば良いかということについては、少なくともそのブランチを共有するメンバーが納得して合意できるレベル(これを good enough と説明されていましたが)でよく、粗過ぎてもいけないし、むやみに細かすぎても本質を見失ってしまうということでした。

また、「教育のための」ということで、こういう利用の仕方はいいなと思ったのは、文章の図解の手段としてブランチを利用するということ。例えば教科書の記述をブランチにしてみるというのは、良い練習になりそうだと思いました。しかもそれを児童に教えることが出来れば、その子供たち自身の読解力・思考力の向上も期待できそうです。ただ、図解で気を付けなければと思ったのは、文章の記述に引きずられてしまうと図解の妨げになることがあり、いかにシンプルで的確な表現に改めるかという点が一つのポイントなのかなと思いました。

あと、ブランチは単に目に見えている現象(あるいは文章として与えられている記述)だけを採り上げて並べるだけでは不充分で、背後に隠れている前提条件をあぶりだす作業(これを「推論」と呼んでいましたが)を通して、ロジックの穴を埋めていく必要があるということを学びました。これこそがきちんと考えるという作業であり、この視点が私には乏しかったので、これまでに作ったブランチも見直してみようと思います。

余談ですが、この研修は山本五十六の精神に則って(?)、講義⇒例題⇒演習⇒共有という流れで行われます。その有名なフレーズを最後に引用します。

やってみせ、言って聞かせて、させてみせ、ほめてやらねば、人は動かじ。
話し合い、耳を傾け、承認し、任せてやらねば、人は育たず。
やっている、姿を感謝で見守って、信頼せねば、人は実らず。

山本五十六.net より
http://www.ym56.net/meigen.html

この4日間しっかりと学んでいきたいと思います。


「2045年問題」松田卓也 著

前回の「ワーク・シフト」と同じく先輩ICにお奨めされた書籍です。「ワーク・シフト」が2025年の世界を描いていましたが、今回は更に20年先の2045年です。この2045年というのは「技術的特異点」とされ、ここを境にコンピュータの能力が人間の能力を超えるという仮説です。「ワーク・シフト」よりは理系的な読み物かもしれません。

コンピュータの進化の歴史に始まり、現在のコンピュータの進化のトレンド、そして技術的特異点を超えた後の世界を順に紹介しています。面白いのは過去のSF映画を「あの映画のあの場面に描かれている」という具合に引用しながら紹介しているという点です。

そういえば、中学校の技術科か何かの授業だったかコンピュータについてのビデオを見せられた記憶があります。内容は忘れてしまいましたがエンディングが印象的で、それはコンピュータが進化し意識を持ったら人間と戦争をするということがあるのだろうか、もしあるとしたらどちらが仕掛けるのだろうか、といった問いかけでした。

本書にはそういったSF色もあるのですが、私が取り上げようと思ったのはそういう側面ではなく、6章に書かれている「コンピュータが進化すると働き方が変わる」という側面です。これは単に仕事の効率がアップするというローカルなレベルの変化ではなく、ワーク・シフトにもつながるグローバルな変化です。

つまり、産業革命による工業化と、工業のオートメーション化によってブルーカラーの仕事が奪われたように、コンピュータの進化によって今後はホワイトカラーの仕事も奪われるだろうということです。もちろんブルーカラーの仕事がゼロにはならないように、ホワイトカラーの仕事もゼロにはならないでしょう。しかしそれを担うのは限られた人たち。多くは職を失うことになります。

本書は働き方についてのテーマではないので、じゃあどうすれば良いかという処方箋についてはあまり紙面を割かれていないのですが、キーワードは能力アップ。特にコンピュータのリテラシーというのは未来の世界を生き抜いていく上で重要な能力であると改めて認識しました。


書名:2045年問題
副題:コンピュータが人類を超える日
著者:松田卓也
発行:廣済堂出版/2013年1月1日
ISBN:978-4-331-51683-6

「ワーク・シフト」リンダ・グラットン 著

皆さんは今の働き方、今の職場の将来に対して不安を感じたことはありませんか。この問いに対する答えは職業だけでなく年齢や地域など置かれている状況によって様々でしょう。しかし、あと数十年は働かなければいけない私たちの世代にとって、これから先、どのような社会になっていくのかというのは無視できない話題です。

今回ご紹介する「ワーク・シフト」というのは2025年、つまり今から12年後の世界の未来の世界を描き出し、そのような世界において活躍できる(という表現が相応しいか分かりませんが)働き方を提唱している書物です。これは先日IC協会のセミナーの時に先輩ICの方からお奨めされた本です。12年後って意外とすぐですよね。

本書は4部構成になっていて、第1部は12年後を特徴づける5要素について述べています。その5要素とは、

  1. 今よりもテクノロジーが進化する
  2. 今よりもグローバル化が進む
  3. 今よりも高齢化・長寿化が進む
  4. それらに伴って社会が変化する
  5. 今よりもエネルギー・環境問題が悪化する

というものです。これらを踏まえて、第2部では、もしこの12年後を「漫然と迎えた場合」にどういった生活が待っているのか、そして第3部では、逆にこの12年後を「主体的に生き続けて迎えた場合」にどういった生活が待っているのかについて描き出しています。最後の第4部では、主体的に生きるための具体的な方法について「シフト」というキーワードで提案しています。

ワーク・シフトとは働き方を変えるという意味ですが、働き方の何を変えるのか、何に変えるのか、どのように変えるのかというのは最終的には個々人が主体的に選択をしていかなければならないということが言われています。ヒントとして、次の3つが挙げられています。

  1. キャリアのシフト(ゼネラリスト志向の終焉)
  2. 人間関係のシフト(新しいネットワークの構築)
  3. 価値観のシフト(収入から経験へ、評価基準の変化)

12年後の世界で勝ち組(という表現が個人的には好きではありませんが)でいるためには、これらのシフトを実践する必要があるということです。

但し、こうしたことを選択していくということは、何かを得る代わりに何かを手放すことになるという現実に着目すべきでしょう。理想の働き方が理想の収入をもたらしてくれるとは限りませんし、理想の評判を得られないかもしれませんし、理想の人間関係を築けないかもしれません。そういった選択の結果に対して私たちは責任を負わなければなりません。

このように言われてしまうと多少なりとも不安になってしまいます。かつては会社が代わりに選択してくれて責任を負ってくれた時代があり、その時は会社に全てを依存していれば良かったのですが、これからはそういう世界ではありません。そんな状況を生きなければならない私たちに向けて、著者は哲学者の引用を用いて読者を励ましています。最後にその部分を引用したいと思います。

選択にともなう不安を避ける必要はない。そういう感情を味わう経験こそが私たちの職業生活に意味や個性、現実感を与える。

今働き盛りの20~40代の方々には是非一読していただきたい一冊です。


書名:WORK SHIFT(ワーク・シフト)
副題:孤独と貧困から自由になる働き方の未来図
著者:リンダ・グラットン
訳者:池村千秋
発行:プレジデント社/2012年8月5日
ISBN:978-4-8334-2016-7

TOCの移行ツリーを実践してきました

今日のYWTMの完成形

今日のYWTMの完成形

8月が始まりましたが、昨日1日は月初からTOCの勉強会に参加してきました。今回の勉強会は定例の…ではなく、とあるFacebookグループ内で呼びかけがあり、実際に会社で困っている知り合いに対して移行ツリーを使って手助けしてあげられないかということでご本人以外に有志が6名集まりました。

前回の勉強会では、ファシリテータを務めたにもかかわらず未完成で終わってしまい心残りだったのですが(実は数日後にオンラインで完成させましたが)、今回も再びファシリテータに手を挙げ、完成には至らなかったもののほぼ筋道をつけることが出来たのでホッとしています。

最初は移行ツリーにしては大きな目標を掲げてしまったことでなかなか先に進まなかったのですが、ご本人が予めやりたいこととして検討して来られた内容を列挙し、それらを要望として並べることで結果的に移行ツリーに落とし込むことが出来ました。ここら辺は反省会で行ったYWTMでも「分かったこと」として挙がったのですが、私が前回参加してモヤモヤしていたことが納得でき、とてもスッキリしました。

やはり思考ツールは場数を踏むことが大切だなと思いました。場数を踏むことで見えてくるものもありますし、それが結果的に問題の解決につながり易くなると思うのです。そして何よりも演習のための題材ではなく、実際の(しかもまだ解決してない)身近な問題に対して適用してみるというのは得難い経験でした。