キャッシュレス社会の落とし穴――大学生協のシステム障害

プロジェクトオーガナイザの吉田聖書よしだみふみです。

先週4月16日に、大学生協事業連合がニュースリリースを出しまして、大学生協の公式アプリに障害が発生したと発表しました。

4月15日に発生した「大学生協アプリ(公式)」障害のお詫び(2024.4.15 生活協同組合連合会大学生協事業連合)

ニュースリリースによると4月15日の12:03に障害が発生し、サインイン、バーコードの更新、チャージ、会員証の表示ができなくなりました。文面ではその結果という風にも読み取れるのですが、生協のレジで電子マネーでの会計ができなくなったということです。

障害の直接的な原因というのが、AWSで設定していた同時接続数の上限値を超えるアクセスがあったことだそうです。ですので、暫定対応としては上限値を増やして、障害そのものは発生から30分後くらいには解消したようです。

では根本原因は何だったのでしょうか。それはニュースリリースには書かれていませんので、推察してみましょう。

まず、同時接続数の上限値の見積もりが甘かったのではないかという可能性について考えてみます。「大学生協アプリ(公式)利用規約」の制定日である2022年8月末ごろからアプリが使われていたと仮定し、ここまでの約1年半はそのような障害が発生したというニュースは聞いていません。ただ、利用開始直後はそんなに利用者がいなかったと考えると、リリースから2回目の新入生を迎えて利用者がぐんと増えた可能性はあります。

次に監視体制に不備があったという可能性について考えてみます。仮に、同時接続数の設定値についてはピーク時には柔軟に拡張するという運用の設計になっていたとします。そうすると、上限に達しそうかというモニタリングを怠ったか、頻度が少なかった可能性があります。リアルタイムに監視するというのは現実的ではありませんので、頻度が週に1回とか月に1回くらいだったとすると、急激なピークには対応できません。

では恒久対応としてはどういう対策が考えられるでしょうか。
実際にどんなデータが取れているかにもよるのですが、まずは登録ユーザー数と1日ごとのログインユーザー数、それからその1日の実際の同時アクセス数の最大値を毎日モニタリングすることが考えられます。そうすることで、登録ユーザー数とログイン数、同時アクセス数の相関が分かりますから、登録ユーザー数とログイン数の傾向から同時アクセス数の上限を超えそうかどうかが推定できるようになります。

ただ、上述したように、日次のモニタリングでは突発的なピークには対応することができないので、外部的なピーク要因を情報収集しておく必要があります。例えば、4月15日というのは、多くの大学で講義が始まるタイミングではないか、つまり多くの学生がランチで生協を利用し始めるタイミングではないかということが推測されるので、その週は上限値を引き上げて様子を見るといった対応ができます。

一方で、こういう決済系のサービスが停止すると影響が大きいですよね。特にデジタルネイティブと呼ばれている世代を中心に全てスマートフォンで済ませるスタイルが当たり前になっています。今回は大学生協という限定された範囲での障害だったこと、また、約30分程度で復旧したということもあり、それほど大ごとになりませんでした。

キャッシュレスは便利ですが、いざという時のために、サービス提供者も利用者も何らかの代替手段を準備しておいた方が良いのではないでしょうか。ぱっと思いつくのは、通常の価格で現金決済しておいて、後日会員証とレシートの提示で組合員価格との差額を返金対応するなどが考えられます。ただ、少額だとそこまでやってられないという状況もあると思いますので、生協側でもうちょっと踏み込んだ対策が検討される必要がありそうです。


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