金融庁が業務改善命令で指摘した、みずほ銀行システム障害の根本原因

先月末11月26日に、金融庁からみずほ銀行とみずほフィナンシャルグループに対して業務改善命令が出されました。一般のニュースにも流れたのでご存じの方も多いと思います。

金融庁の発表はこちら。

みずほ銀行及びみずほフィナンシャルグループに対する行政処分について(令和3年11月26日)

実は今年の9月にも、みずほ銀行とみずほフィナンシャルグループに対して業務改善命令が出されていて、立て続けにこのような業務改善命令が出るというのはあまり聞いたことがありません。

このブログでも2月の大規模障害を取り上げましたが、今回は処分の理由について注目したいと思います。9月の行政処分では処分理由が2項目でした。ところが今度の行政処分では処分の理由が10項目、文字数にして約3,000字も書かれていて、これはなかなかですよね。今年だけで8回も大規模システム障害が発生していますし、処分の重さを感じます。ちなみに、みずほ銀行は、うちのメインバンクなので、これに懲りずに根本的に是非組織を立て直していただきたいなと個人的には思います。


※ この記事は、先日公開した以下の音声コンテンツを基に編集したものです。


一般論として、ITの現場を軽視している会社は、作業環境も悪くなりますので、ITエンジニアは寄り付かなくなる傾向があります。上から指示があったことしかやらせてもらえないというのは、ITエンジニアとしてはやりがいもありませんし、そこにいる意味がないですよね。

着任したばかりの頃は良いのかもしれませんが、数か月あるいは数年と同じ現場で仕事していくと、自分が成長していないということに気付きます。特に、工数が削減されていくとやれることも限られてきますので、法令改正対応とか必要最低限の保守しかできないことになります。

もちろん中には成長を望まない人もいますので、そういう人はそういう現場に残るかもしれませんが、成長を望む意欲的な人はそういう現場を早々と去ってしまうでしょうし、私もあまりそういう現場はお薦めしません。

さて、興味深いのは、今回発表された記事の中に、システム障害の直接の原因と、その原因の背景にある根本原因について書かれている点です。直接の原因として指摘しているのは3点あります。表現を分かりやすくするために意訳すると、1点目は、充分なテストをしていないということ。2点目は、システムの保守をないがしろにしているということ。最後の3点目は、防災対策をチェックしていないということです。

一段掘り下げた原因として興味深い指摘がありまして、会社の執行部門(これは社員ということでよいかと思いますが)の社員がシステムが安定稼働していると誤認して、その間違った前提に立って構造改革を進めてしまった…ということです。これはすごい状況ですよね。この金融庁の処分理由によれば、根本原因は組織のガバナンス不全であると厳しく指摘していますので、もしかしたら、誤認したというよりは、情報システムの現場の声を無視したか、あるいは、悪い情報をエスカレーションしてはいけないというような不文律でもあったのかもしれません。

後日、この行政処分を受けて社長と頭取が辞任しましたけれども、そんなレベルで本当に立て直せるのかという疑問が残るほど厳しい指摘が数々述べられています。この数年、DX(デジタルトランスフォーメーション)などといって情報システムに注目が集まっていますが、誤解を恐れずに言えば、それは情報システムがコストセンターではなく、むしろプロフィットセンターとして位置付けるんだ、という発想の転換ですよね。それができないDXは単なるコスト削減の施策に陥り、同じような道を辿るのではないかと危惧します。



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