テスト漏れか?廃止したはずの印鑑登録証が誤って発行された

プロジェクトオーガナイザの吉田聖書よしだみふみです。

5月12日に、新潟市のコンビニで、抹消したはずの印鑑登録証明書が発行されたという事故が発生しました。この事故を受けて新潟市は5月15日にプレスリリースを出しまして、状況確認と今後の対応調整のために、証明書交付サービスを一時停止すると発表しました。また、同日に証明書交付サービスのシステムベンダーである富士通がプレスリリースを出しまして今回の事象と原因を公表しました。

「印鑑登録証明書」コンビニ交付サービスの停止について(2023/5/15 新潟市市民生活課)【PDF】

「Fujitsu MICJET 住民記録システム(政令市版)」における、申請者の抹消済印鑑登録証明書が発行された不具合について(2023/5/15 富士通Japan株式会社)

富士通のプレスリリースによると、今回の事故は全体として見ればレアなケースで、前提として政令指定都市でしか発生しないということです。最初に住民が自分の住んでいる区で印鑑登録をします。そして市内の別の区に転出して、その区で印鑑登録を廃止します。それから元々住んでいた区に再び転入して印鑑証明書を発行すると廃止したはずなのに発行できてしまうということです。これはテスト漏れでしょうね。

先ほどレアと書きましたけれど、よくよく考えたら私も経験したことがありました。住んでいた区をいったん離れ、別の区に住みましたが、また戻ってきたことがあります。当時はマイナンバーカードではなくて印鑑登録カードでしたけれども、本来は転出する時に返さなければいけないんですが、忘れていて、戻って来た時に印鑑登録をしたにもかかわらず、印鑑証明書を発行してもらう際に古い印鑑登録カードを出してしまったといった事がありました。

ただ、東京なのでその他の政令指定都市とは事情が異なりますね。東京以外の政令指定都市の場合は住民登録とか印鑑登録は区役所で手続きしますが、登録そのものは市に対して行います。市の管轄です。でも旧東京市の場合は市が今は存在しないので、住民登録も印鑑登録も区に対して行います。なので旧東京市内でも区が変われば古い印鑑登録は転出した時点で無効になります。今回のケースは、同じ市の別の区へ異動ですから、転居しても印鑑登録は有効なままのはず。なのに、転居先の区で印鑑登録を廃止したという情報が、転出元の区に連携されていなかったのか、連携されていてもロジックがまずかったということなのでしょう。


※ この記事は、先日公開した以下の音声コンテンツを基に編集したものです。


住民票、戸籍謄本に続いて印鑑登録証明書ということで、今年に入って証明書交付サービスのトラブルが続いていますね。新たな不備が見つかったというニュースを知って「証明書交付サービスは大丈夫なのか?」と心配になったり、不審に思う人もいるでしょう。ですが、これは利用者が増えてきたことの証左でもあるので、事故の当事者になったら困りますけれども、傾向としては良くなる方向に向かっているのではないかと考えます。

極稀に「バグをゼロにできないのか!」とお叱りになる方を見かけます。まあ、気持ちは分かります。そういうことを言うのは大抵上役の方々なんですけれども、開発経験者であれば、それがいかに無理であるかということはご理解いただけるかと思います。テストはちゃんとやっていたとしても、思いつかなかったパターンはテストできません。それに条件のパターンは無限の組合せがあるので、全部をテストするという発想は現実的ではありません。

特に今回のようなケースはどちらかというと業務的な考慮漏れなので、システムベンダーではなく、自治体側が業務パターンを出さないとなかなか気づけないかなと思います。自治体の転居の届出を処理する担当者が業務上実際にあり得るケースを洗い出して、テストシナリオに反映する必要があるということです。場合によってはそれでも漏れることもありますけれども、システム開発というのはそういうものです。



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