プロジェクトオーガナイザの吉田聖書です。
5月19日に、富士通が公式サイトにお知らせを掲載しまして、今年に入って続いているコンビニ交付サービスのトラブルを踏まえ、「システム品質の改善・向上」策を公表しました。
情報セキュリティ対策の強化およびシステム品質改善に向けた当社の取り組みについて(2023/5/19 富士通株式会社)
今回の発表では、この数年で発生した別のセキュリティ事故についての対策についても触れられていますが、今回はそちらには触れずに、コンビニ交付サービスのトラブルについての対策にフォーカスしたいと思います。というのも、この番組でも、住民票、戸籍謄本、そして印鑑証明書と相次ぐトラブルについて取り上げたので、一旦の総括的な意味合いでそうしようと思います。
お知らせによると、富士通グループではSIビジネスの品質管理においての統制の改革を進めているところだったようです。2022年度にはまず親会社に展開して、今年度、コンビニ交付サービスの構築を行った子会社に展開する計画だったとしています。そして、それが展開される前に今回の一連の事故に至ったということです。品質に課題があると認識していたわけですから、これが先に改革の展開が済んでいればと思うと、親会社からしてみれば悔しいでしょうね。
今回改めて発表された対策は具体的に3つ挙げられています。
まず1つ目は「富士通Japanに対する品質統制の早期権限集中化」と書かれています。これはおそらくですが、子会社・富士通Japanに対して今年度展開しようとしていた取組を前倒しですぐにやるというように読めます。当初の計画がいつ頃やろうとしていたのか分かりませんけれども、悠長なことは言っていられないということなのだろうと推測します。具体的には「標準化されたプロジェクトマネジメント、品質管理、リスクモニタリングによる予兆検知、現物確認」とありますが、今まで出来ていなかったということなのでしょう。
2つ目は「住民向けサービスに対する品質統制の恒久対応」と書かれています。この見出しだけだとちょっと何言ってるか分からないんですが、本文を読むと、証明書の発行処理のリクエストとレスポンスが混ざらないようにするためにフェールセーフを組込むとあります。フェールセーフっていうのはエラーがあっても大惨事に至らないような仕組みにするという考え方ですけれども、要は間違った証明書が発行されるくらいなら、そのリクエストは処理を中止してしまった方が良いということなのでしょうね。
そして最後の3つ目は「品質統制・リスクモニタリングを支える設計・運用基盤の強化」と書かれています。これは、システム開発の作業の状況や品質を見える化して、リリース可否の判断を客観的に行える仕組みを導入するということのようです。
※ この記事は、先日公開した以下の音声コンテンツを基に編集したものです。
このお知らせを読んだ感想としては「これなら大丈夫だ」とは思えないということです。全体的に統制を強化するという方向性のように読み取れました。逆に言うと、親会社にできることはこれくらいなのかなとも思いますが、本質を外しているような気がしてなりません。
懸念しているのは、例えば品質について、計画が妥当かどうかのチェック、そして計画通りにやれているかのチェックをするということですが、中身にどこまで踏み込むのか不明です。チェックするのであれば、チェックする部門が合格ラインを示す必要があります。何をもってOKとするかということです。親会社に展開されている品質基準が、それがどこまで現場レベルに落ちるかがポイントかなと思います。
それからモニタリングについて、プロジェクトの進捗や品質をタイムリーに解析するということですが、これをやろうとするとかなり現場に負荷がかかることが想定されますが、そこまで織り込まれているのでしょうか。スケジュールが遅れているとか、品質が悪いということが分かった時にどう現場に関与するのでしょうか。管理ではなく監視になってしまったら、現場のモチベーションが心配です。
関連記事
プロマネの右腕
プロジェクトマネジメントの支援を行っています。
新サービスの企画を任されたけど どう進めていいか悩んでいる担当者、
部下に新しい企画を任せたけど このままで大丈夫か不安な管理職の方、
以下のサイトをご参照ください。
https://www.crossidea.co.jp/services/right-hand-pmo.html
YouTubeにて動画配信中!
プロジェクトマネジメントのノウハウをYouTubeで配信しています。
ブログと併せてご活用ください。