プロジェクトオーガナイザの吉田聖書です。
リスク管理について学んでいると、
全体リスクと個別リスク(あるいは部分リスク、または原因リスク)
という言葉に出会います。
ところが、あるWebサイトで
全体リスクの説明に違和感を覚えたので
今回はそのことについて書きたいと思います。
昨年、このブログで
リスク管理について連続で記事を書きました。
そのシリーズの最初で
次のように注記しています。
PMBOKでは個別リスクと全体リスクを区別して書かれていますが、ここでは個別リスクに絞って話をします。
これ以上深掘りするつもりはなかったのですが、
あるWebサイトで、
個別リスクは一部に関わるリスク、
全体リスクは全体に関わるリスク、
というような説明がなされていて、
それは違うんじゃないかなと思いました。
また、全体リスクは
プロジェクトの外から影響を受けるリスク
のように説明されているサイトもあり、
余計訳が分からなくなりますね。
ここでPMBOK®ガイド第6版の定義を見てみたいと思います。
「個別リスク」とは
「発生が不確実な 事象または状態」とあり、
「全体リスク」とは
「プロジェクト全体に及ぼす不確実性の 影響」とあります。
確かにPMBOK®ガイドの定義は分かり難いと思います。
ただ、個別リスクは「事象または状態」であり、
全体リスクは「影響」とあることから、
影響範囲の大きさとか、単なる発生源の違い
ということではないと言えます。
もう一つ書籍を引用したいと思います。
「熊とワルツを」という
リスク管理の教科書的存在です。
私がITの仕事を始めたばかりの頃は、
まだシステム構築のプロジェクトは
満足にリスク管理ができていませんでした。
今では随分とリスク管理の考え方が
浸透してきていると感じますが、
恐らくこの本が多くの人に読まれたのでしょう。
本書にはこのように書かれています。
全体リスクの不確定性は、成否を決める原因の不確定性を積み重ねた結果である。
トム・デマルコ、T・リスター「熊とワルツを」(日経BP社)・101ページ
リスクとは不確定性であり、
全体リスクとは、
個別リスク(本書では部分リスク・原因リスクとも)の
不確定性を足し合わせたものである
ということです。
別の言い方をすれば、
個別リスクの不確定性がPJ全体に与える影響を
全体リスクとして捉えるということです。
個別リスクが変動すれば
全体リスクも変動するのです。
それを踏まえて
もう一度PMBOK®ガイドを読むと
こうも書かれていました。
個別リスクとその他の不確実性要因の組合せから生じる、プロジェクト全体のリスク
「11章 プロジェクト・リスク・マネジメントの主な概念」より
これはまさしく「熊とワルツを」での考え方と合致するものです。
全体リスクに影響を与える要因が個別リスクであるということです。
不確定性というのは
プラスに働くこともあれば
マイナスに働くこともあります。
「全部足し合わせると結局どうなの?」
を計算した結果が全体リスクとなります。
実務でここまで厳密に計算している現場は
今のところは見たことありませんが、
まずはこの原理を知っておくことが
大切なのかなと思います。
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