幼稚園バス・送迎バスでの置き去り事故を防ぐために

プロジェクトオーガナイザの吉田聖書よしだみふみです。

12月20日に、国土交通省がプレスリリースを出しまして、「送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドライン」を策定したと発表しました。

送迎用バスの置き去り防止を支援する安全装置のガイドラインを策定しました(2022/12/20 国土交通省)

これは何かというと、来年の4月から、幼稚園などの施設へ子供を送迎するバスに、置き去りを防止するための安全装置の設置が義務化されまして、その安全装置の機能要件・非機能要件をガイドラインとしてまとめたということです。背景として、今年9月に静岡県牧之原市の認定こども園で、送迎バスに置き去りにされた園児が亡くなるという痛ましい事故がありまして、去年の7月にも福岡県中間市の保育園でも同様の事故があり、それらが念頭にあるようです。

このガイドラインの策定には専門のワーキンググループが組織されまして、その中で検討を進めていたようです。委員としては自動車メーカーや自動車部品メーカーの有識者が、また幼稚園などの施設の園長さんなどがオブザーバーとして名前を連ねています。

安全装置の方式としては大きく2種類定義されており、一つはエンジンをオフにするとアラームが鳴って、後部座席付近にある確認ボタンを押すとアラームが停止するという「降車時確認式」(一定時間確認ボタンが押されないと車外にアラートを出す)。もう一つは、エンジンをオフにするとセンサーがオンになって、置き去りにされた子供を検知すると車外にアラートを出すという「自動検知式」です。もちろん2種類の方式の装置を両方取り付けて併用しても良いわけです。

機能要件として様々な項目がありまして、一つ目の降車時確認式の場合、車内にアラートを出す前に車外にアラートを出してはいけないとか、車外へのアラートはエンジンを停止してから15分以内に行わなければいけないとか、せっかくのアラートも周囲の騒音で聞こえないと意味がないので、50m離れていても充分に聞こえるようにすることとか、子供たちが簡単にいたずらできないような場所に取り付けることとか、結構細かく定義されています。

また、いずれの方式であっても、装置が故障したことを検知できることとか、安定して動作するように電源や回路などを二重化すること、あと、非機能要件として、駐車場に長時間駐車してある時は夏は高温、冬は低温になるので、そういう条件下でも故障しないことや、電源電圧も±20%の変動でも正常に動作することが定められています。まあ、ごく当たり前というか、他の車載機器と同レベルの性能が求められているのかなと思います。


※ この記事は、先日公開した以下の音声コンテンツを基に編集したものです。


安全装置の義務化、それそのものは良いと思います。ただ、一方で個人的に気になっていることもあります。それは、このガイドラインにも書かれているんですけれども、この安全装置はあくまでも補助という位置づけだということなんですね。

今は良いと思うんです。まだ話題としてホットなので現場の意識も高いでしょう。でもこういう事故の記憶はどんどん薄れていきます。やがて、この事故を知らない世代が運転手を務めることになるかもしれません。安全装置がなぜ義務化されたかを知らなければ、例えばうるさいので安全装置のスイッチを切ってしまうような不適切な運用が行われ、新たな事故が発生しないとも限りません。

この手の事故ってヒューマンエラーですよね。大きな事故はいくつかのヒューマンエラーが不運にも重なった時に起こるというモデルがあります。このモデルに従うと、安全装置を取り付けたから運用はおざなりで良いということにはならない、安全対策は何重にも行うべきなんです。

今まではそういう装置もなく安全確認をやってきて、ほぼ毎日全国の施設で送迎バスを運行していることを考えると、そんなにしょっちゅう事故が起こっていたわけではありません。たまたまこういう事故が発生したので「大変だ」ということで安全装置の義務化が行われるに至ったわけですが、日頃の安全対策があってのプラスして安全装置の補助です。そもそもの日頃の運用が大事だと思うのです。



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