COBOLは高齢者の言語なのか

ITコーディネータの吉田聖書よしだみふみです。

最近ニュースでよく耳にする
厚労省の「毎月勤労統計」に関する不正問題。
その調査結果についてのあるネット記事で
プログラムがCOBOLで「高齢者しか読めない」と書かれ、
それに多くのIT技術者が反応しているようです。

おお、そうか!と思う前に
ざっくり状況を整理したいと思います。
(参考:毎月勤労統計調査を巡る不適切な取扱いに係る事実関係とその評価等に関する報告書について

  • 500人以上の事業所について、全数調査するとしていたところを東京都だけ標本調査していた。
  • 標本調査の結果を全数に復元すれば問題ないと思っていたが、情報システムに反映されなかった。
  • 結果として統計調査全体の結果が狂った。

では、なぜ情報システムに反映されなかったか。

  • システム改修の依頼(仕様の伝達)が必ずしも文書ではなく口頭で行われることもあった。
  • 当該システムのプログラミング言語(COBOL)のできる担当者が1~2名のみであり適切なコードレビューが行われなかった。
  • システム改修以外ではプログラムが正しい事を検証するタイミングが無く、不備を一度見逃すと発見されにくい状況であった。

ということのようです。
厚労省の報告書を読んだ限りでは
「COBOLが高齢者しか読めないのが原因」
と結論付けることは出来なさそうです。

確かにCOBOL言語は
誕生から50年以上が経過しており
FORTRANなどと並んで古い部類に入ります。
一般の言語なら古文に相当するでしょう。

汎用系システムが分散系システムに
置き換わっていったタイミングを境に
COBOLメインで仕事をする人が
徐々に減っていったのは間違いないです。
そして新たにCOBOLを学ぶ人も少なくなり、
結果的にCOBOLが出来る人というのは
比較的古い技術者(高齢者?)が多い
ということになります。

上記の報告書を読むと
プログラミング言語の問題というよりは、
システム開発およびその運用・保守についての
マネジメントの欠如の問題と判断することが出来ます。

もし、マネジメントが機能していたら、
保守できる人がいないという問題に対して、
プログラミング言語が古くマイナーなのであれば
比較的新しいメジャーな言語で再構築する、
あるいは、それが出来なければ
古くマイナーなプログラミング言語ができる
技術者を採用あるいは外注する
といった施策を検討することが出来ます。

依頼を口頭でなく文書で行うというのも
システム開発・保守を行っている現場では
マネジメント上必須のルールであり、
情報システムに対する向き合い方が
ちょっとITの素人っぽいですね。

アメリカの元技術者で
コンサルタントのG.M.ワインバーグは、
著書「コンサルタントの秘密」の中で
次のように述べています。

問題が「本当に」技術的問題である場合でも、たどってゆけば昔マネージャー層が何かをしたこと、またはしなかったことに原因を求めることができるものなのだ。
「コンサルタントの秘密」・6ページ

今回たまたまCOBOLに焦点が当たりましたが、
こういった状態の組織であるならば、
どんなプログラミング言語を使ったとしても
同じ状況に陥ることは想像に難くありません。

仮にCOBOLが高齢者の言語だったとしても、
それが原因またはその一つであると言ってしまえば
本当の原因が見えなくなる可能性があります。


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