鵜飼船の若手船頭に学ぶ

一昨日19日にJSDGの中部研修会が開催され、参加してきました。今回は例年開催している長良川の鵜飼いとセットになっている研修会で、石金という旅館の一室を借りて行われました。(もちろんその旅館に宿泊します。)今年で5回目とのことですが、私は去年が初参加で今回は2回目の参加でした。

研修会では鵜飼船の船頭である平工顕太郎(ひらく・けんたろう)さんを招いて、インタビュー形式で鵜飼の話やこの世界に入ったいきさつなどを伺いました。船頭というのは簡単な仕事に見えて細かい気遣いを求められ、最初は厳しい指導を受けたそうですが、自分の舟を持つようになった頃からそういうのは徐々に少なくなっていったそうです。何より船頭としてのスキルは教わって覚えるものではなく、実際にやって解ることが大事なのだとか。差し詰めITの世界で言ったら自分のサーバーを持つようなイメージでしょうか。また、地元を一旦離れて外から眺めて見た方がその良さを再認識しやすく、仕事に対するモチベーションもより高まるようです。川と共に生きる覚悟を決めた男の姿をまざまざと見せつけられました。

平工さんは来月から木製の漁船に観光客を乗せて「結の舟(ゆいのふね)」という体験型ツアーを始めるのですが、私も企画に携わっていて、翌日、他のスタッフと共に体験乗船してきました。最終チェックを行いたいとのことで駆り出されたのですが、情報システムで言うところのユーザーレビューあるいは受入テストに当たるでしょうか。例えば、流れの静かなところで手ほどきを受けながら操船の体験をしたり、平工さんが日頃から漁で使っている網を投げる体験をしたりといった内容です。操船も竿がなかなか川底に刺さらず(川底の石の表面を滑ってしまう)、投網もうまく網が広がらずに束のまま放り投げてしまったり、「なるほど覚えると分かるは違うんだな」ということを改めて学びました。

川には危険がいっぱいあり、先日も小学生が事故に遭ったりして怖いと思う方も多いと思いますが、危険だから近づかないという対処は却って対象をブラックボックス化してしまいます。それよりは具体的にどのような危険があり、どのように対処すればよいかということを学んだ上で遊ぶことが大切かなと思います。河原を歩く時に転倒事故が多いそうなのですが、転倒しないためには浮石を踏まないようにするとか、今回ライフジャケットを着用したのですが、流された時には立ち泳ぎしないでラッコのように浮いて頭を川上に向けて流れに任せるなど、話で聴いただけでは分かりづらいことを体験を通して学ぶことができます。

尚、この体験ツアーは対象を小学1年生以上をとしたいとおっしゃっており、この夏休みに岐阜方面に行かれる方はぜひ検討してみてはいかがでしょうか。この事業を通してより多くの人に川に親しんでもらいたいと思うのと同時に、平工さんの今後のご発展とご活躍を願って止みません。

石金
http://www.ishikin.co.jp/

結の舟
http://yuifune.wix.com/yuino-fune

 

フラットデザインには慣れなければならないのか

アップル社のiOS 7、そしてマイクロソフト社のWindows 8がリリースされてからというもの、あののっぺりとした味気ない画面(UI)に抵抗を感じています。おそらく私はコンピュータの画面が文字ベースからグラフィカルになった頃から今日に至るまでコンピュータに慣れ親しんできて、UIの変遷を見て来ていますので、そもそもUIはリアルでリッチな表現を目指して進化してきたんじゃなかったっけ?というのが素朴な疑問です。

なんていうんでしょう。iPhoneが登場したころ、様々なアナログ・オブジェクトがモデリングされてアプリにされました。そこではピンチやスワイプといった、タッチパネルならではの操作方法と共にそのデバイスの特徴が示されていたと思います。スマートフォンに限らずパソコンのOSでも、例えばボタンはあの立体的な描写だから指で押したくなるわけで(といっても従来のパソコンではマウスポインタを当ててクリックするだけなんですが)、それが急に平坦になるとどうして良いか分からなくなってしまうのです。

とはいえ、iPhone登場前後に、ある種のサイトがこぞってボタンの表現を立体的でガラス光沢のある描写に変えた時、それにも抵抗感を覚えたことも事実です。従前の描写ではなぜいけないのか、その理由が全く見えなかったからです。どうも最近のこの平坦な描写への方向転換は、UIにおける描写のリアルさ、リッチさが本来意図していなかった方向に加熱してしまったことに対する反省に基づいているということのようです。

例えば、本がめくれるような描写は、紙の本を読んできた人でないとピンと来ません。リアルなマイクの図柄も、あのようなマイクを見たことが無いとこれがマイクだと理解できないかもしれません。そうなると、知っている人にとっては「説明しなくても扱い方が理解できる」というメリットがあっても、知らない人にとってはそういうメリットは享受できないことになります。芸人のモノマネが真似ている対象を知らないと面白くないように、パロディが元ネタを知らないと面白くないように、模倣というのは原典(オリジナル)を知らない人にとっては模倣の意味が無いものです。

リアルさ、リッチさとは少し異なりますが、パソコン向けの多くのアプリケーションが「保存」という操作をさせるためのアイコンの図柄にフロッピーディスクを採用しています。しかし、そもそも最近のパソコンにはフロッピーディスク装置が付いていることがほとんど無く、フロッピーなんて知らない人たちがいてもおかしくありません。そうなると、フロッピーディスクのアイコンが何をするものか想像できない人も出てくる可能性があります。

現在進行している方向性は、よく標識に喩えられています。標識は道路に限りませんが、日本の道路標識は非常にシンプルで分かりやすく、良く考えてデザインされていると思います。もし道路標識がリアルでリッチな描写を採用していたら、立ち止まって眺めるにはいいかもしれませんが、車を運転しているときに一瞬で判断しづらい(つまり目的を達成しにくい)のではないかと想像できます。

実は、iOS 7からiPhoneを使い始めたという人からは、このデザインに対して別に違和感はないという意見を伺っているので、そういうものだと思えば済む問題なのかもしれません。となると、今は過渡期なので全てのフラットデザインが使い易いわけではないとしても、流れとしてはシンプルな方向に向かっていくと思うので、やはり慣れていくしかないのではないか、と私の中では結論付けております。