何とも過激なタイトルに惹かれてつい手に取ってしまいました。最初は懺悔の手記かと思ったのですが、そうではなく(一部は懺悔もありますが、実際に潰したということではないようです)著者自らがコンサルタントとして携わった失敗事例と成功事例とに基づく研究の成果をまとめた本です。
世の中にはビジネスモデルや経営理論といったもので溢れており、状況によってはフレームワークとか、ソリューションとか、メソッドとか呼ばれることもありますし、コンサルファームに在籍していなくてもある種の資格試験に出題されることもありますので、それらのうちいくつかは知っているという方が多いと思います。ただ、例えば3Cや4Pなどの名前や内容は知っていても、それらが生まれた背景まで辿って理解している人は少ないかもしれません。(私だけでしょうか。)
本書は次のようなテーマを扱っています。
- 戦略計画
- 最適化プロセス
- 数値目標
- 業績管理システム
- マネジメントモデル
- 人材開発プログラム
- リーダーシップ開発
- ベストプラクティス
本書はこれらのモデルや理論の欠点をあげつらって溜飲を下げるための本ではありません。本書を読む限り、少なくとも1回はそれらのモデルや理論は効果を表し、成功を収めたものがほとんどです。ポイントはそれらのモデルや理論が「いつでもどこででも効果的」というわけではない点です。
モデルや理論の適性や、状況を見極めずにそれらを適用した場合にどのような悲劇が起こるかという悪いシナリオが事実に基づいて記されています。最後には、クライアントの立場で物を考えずに闇雲にベストプラクティスを当てはめようとするコンサルタントを避けるように警鐘を鳴らして締めくくっています。
これらのモデルや理論がうまく機能するためには。それぞれいくつかの前提条件があります。それらの前提条件が満たされていなければ当然ながらそれらに基づく活動は失敗します。前提条件の中には業種や業態といった固定的なものから、事業規模や従業員といった流動的なものまであります。
うまくいかなかった失敗事例では、単なる事の顛末の記録に止まらず、何故うまくいかないのか、その理由について分析しており多くの示唆を与えてくれます。また、それらのモデルや理論に頼らずに(むしろモデルや理論の方針とは正反対のことを実施して)成功を遂げた例も豊富に記されています。モデルや理論があくまでも「型」に過ぎないのだということを再び想起させてくれます。
2週間くらい前に買ってから既に2回通読しましたが、これからも度々読み返そうと思います。
書名:申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
副題:コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする
著者:カレン・フェラン
訳者:神崎朗子
発行:大和書房/2014年3月30日
ISBN:978-4-479-79433-2