「潜在意識をとことん使いこなす」C・ジェームス・ジェンセン 著

私は社会に出てから、というよりこのIT業界で働くようになってから、技術系の本ばかりでなくビジネス書(いわゆる自己啓発本も含む)をよく読むようになりました。少なくとも私自身は技術力で勝負するつもりはなかったので、もっとビジネス的なセンスを養いたいと思ったからなのでしょう。

ビジネス書をいろいろ読んでいくと、それぞれは素晴らしいのですが、それらを全て実行しようとすると本の数だけやるべきことがあり、挫折感ばかり味わうということになりかねません。社会に出て10年以上が経過しましたが、本書を読んでそれぞれのテーマがようやくつながったのです。さすがに全てとは言いませんが、私が読んだ中で多くの本が持つ共通項は「悟り」です。

悟りや潜在意識というとなんだか胡散(うさん)臭く感じるかもしれませんね。書店で見かけたときも一瞬そのように思って躊躇しました。一時期「マインドコントロール」という言葉が流行り、今でも時々マインドコントロールに関わる事件のニュースを耳にします。そのような事件は何故と思う一方で怖いと感じるものです。それはいかに潜在意識が影響を受けやすいかということを示しています。だから、自分で自分にマインドコントロールを施す(いわゆる自己暗示をかける)ことによって自分を変えることが出来るということのようです。

本書を読み進めていくと、潜在意識の性質(メカニズム)について、またその性質を利用してどのように自分を変えられるのかについて、理論と実例が記されています。そして変化を起こす手順は次の通りです。

  1. 願う
  2. 期待する
  3. 想像する

願っても叶えられないのは願うだけで止まってしまうからです。だからよく成功した著名人が「目標には日付を入れなさい」と言ったり、「出来ない理由ではなく、やるための方法を探しなさい」と言ったりするのは理に適っているのですね。

また、潜在意識は影響を受けやすいため、潜在意識に届ける情報を自分で選択する必要があるそうで、善良な考えを持てば良い事が起こるし、邪悪な考えを持てば悪い事が起こるということです。潜在意識は反論することなく意識(=心の声)の指示に必ず従うのだそうです。そういえば、私がかかっている歯医者では、歯列の矯正をしていた時「この歯で噛みなさい。思うだけでも良いから」と毎回受診の度に言われていました。今思うと、これも歯科医師が潜在意識の力を理解してそのように指導していたのだなと思わされます。

さて、私の頭の中でつながった書籍をいくつかご紹介します。

  • なぜあの人だと話がまとまるのか?(田村洋一 著)にて、話をまとめるには明確なビジョンを描くこと、徹底した相手主義を貫くこと、脱力して諦める(つまり悟る)ことの必要性を繰り返し説いています。
  • スーパーエンジニアへの道(G.M.ワインバーグ 著)では、ビジョンを描くこと、物事に対する自分の反応を客観的に説明する(これも悟る)ことだけではなく、心理療法として自己暗示によって自分を変える方法が紹介されています。
  • また、ベストセラーの嫌われる勇気(岸見一郎 著)でも過去が現在の状態を引き起こしているのではなく、過去の出来事に対する自分のスタンスが現在の状態を決めていると書かれています。そしてそのスタンスを変えることによって自分を変えることが出来ると説いています。

このように「悟る」というテーマが異なる切り口のビジネス書の根底に垣間見られることから、「悟る」ということがビジネスでもプライベートでも自分を成長させる鍵になるのではないかと思っています。私も願い、期待し、良い結果をイメージすることから始めたいと思います。


書名:潜在意識をとことん使いこなす
著者:C・ジェームス・ジェンセン
訳者:大沢章子
発行:サンマーク出版/2015年2月20日
ISBN:978-4-7631-3441-7

どうやって仕事で早く立ち上がるか

プロフェッショナルとして仕事をしていると、まず好印象を持ってもらうということが重要な関心事の一つになります。挨拶や笑顔も大事ですが、とにかく早く立ち上がるということを心掛けています。例えば、システム開発の現場に呼ばれて入る場合を考えてみると、契約期間が4か月だというのに立ち上がるまでに2か月も3か月もかかっていたのでは話になりません。クライアントからは使えない奴ということで終わってしまうでしょう。(もっとも、仕事が出来る出来ないを判断するのに1か月もかかることは稀ですが。)

ちなみに、立ち上がるというのは、少なくともクライアントに求められているレベルで仕事ができるようになることです。私自身が新しい仕事を始める時にどのようなことを心掛けているか、ここで整理してみたいと思います。

1. 最初に現状を俯瞰し、全体像を把握する

何はなくともこれでしょう。イメージとしては新しい土地に行ったら展望台に昇って街全体を見渡し、どんな場所なのかを把握する程度で良く、あの路地の先がどうなっているかなど細かいところは追々調べて行けばよいのです。

かつて、あるシステム開発の現場に入った初日にいきなり詳細設計書の説明を始めたSEがいましたが、私はそれを遮って「何の業務をする画面なのか」について説明を求めました。これから取り組む仕事が全体のどんな位置づけなのかを知るというところからスタートします。

2. 今何を期待されているか理解する

次に自分が求められていることを理解します。システム開発だったら設計なのか実装なのか、単純作業なのか頭を使う作業なのかといった仕事の内容だけでなく、クオリティ重視なのかスピード重視なのか、自分が成果を出せばよいのかメンバーを育てて欲しいのか、さらには細かくオーダーされるのかこちらから提案が必要なのかといった仕事の方向性を見極めます。

まあ、この辺りは事前の面談である程度ヒアリングできるのですが、管理者と担当者では思惑が異なっているケースもあるので注意が必要です。

3. 成果を出すために必要な情報を集める

状況を把握して自分の役割が明確になったら次は情報収集です。多くの場合、インストラクションを受けることが多いので(資料だけ渡されるというケースも無くはないですが)説明してくれた人と仲良くし、その人を足掛かりに情報を集めることになるでしょう。情報を全て記憶しておくことは不可能ですので、参考資料があるのであれば資料の場所を確認します。また、分からないことは誰に訊けばよいかということも確認するようにします。

4. 早めに最初の成果を出し、軌道修正する

クライアントにとって自分が使える人間であるか(ニーズにマッチしているか)どうかということを判断してもらうためにも、早い段階である程度の成果を出すことも必要です。その成果とは完璧である必要はなく、最初の2~3日でおよそ求められているものの4~5割くらいの完成度で「こんな感じで良いか」という方向性を確認してもらうことが多いです。確認してもらうサイクルを最初は細かく回して、もし方向性が間違っていた場合でも軌道修正しやすくしておくことも大切です。大作を作り上げてから根本的な部分で指摘を受けたら軌道修正するのはかなり骨の折れる作業になるからです。

5. 継続して成果を出すための自分のリズムを作る

最初は頑張ったけれど息切れしてしまっては元も子もありません。仕事のサイクルもそうなのですが、1日単位、週単位で仕事を含めた生活のリズムを作り上げることで、常に最高のパフォーマンスが発揮できるように心がけます。

あるシステム開発の現場で、着任2か月目から約1か月半毎日終電だったことがあるのですが(しかも土曜日も出勤していました)、ああいった業務を続けていたら体を壊してしまいます。踏ん張りどころではどうしても帰宅が遅くなってしまうという時期があるにせよ、そうでないところでは早めに終業するなど緩急のバランスを取る必要があります。

こうして見てみると、特別なことは何一つやっていないような気もするのですが、これが正解ということはないですが自分はこのようにやっています。

「話は最初のひと言で決めなさい」吉田たかよし 著

本書は10年くらい前に買った本ですが、そもそも何で買ったのか当時の背景は忘れてしまいました。私は人前で話すことに苦手意識を持っており、コンプレックスを抱いていたからかもしれません。今回、本棚の整理をしていて捨てるかどうか判断するためにもう一度読んでみることにしました。

著者は元NHKのアナウンサーということで言ってみれば話すことについてのプロフェッショナルです。またNHKを退職してフリーのアナウンサーになるというケースが多い中、著者は政治家の秘書を経て医者になったという異色の経歴をお持ちです。

私がこれまで出会った方々を見ていて、確かに話の上手い下手というのはあると思います。しかし著者は、弁が立つ(=話が上手い)人ほど言いたいことが伝わりにくいと述べています。なぜなら、自分は話が上手いと思っている人は困難な状況に対して口先でごまかしてしまうからだと言います。話が流暢で長い割には中身が無く、聞いている方も時間を奪われ、体力も気力も消耗します。

逆に口下手な人は、それができないので、どのように伝えたら伝わるかということを真剣に考えることができるのです。その考え抜いた結果がタイトルにもある「最初のひと言」だというのです。ただ、「最初のひと言」というのは少し極端な表現にも聞こえますが、「最初の15秒が勝負」だと著者は述べています。何故でしょうか。

ところで、多くの人がSNSを始めた頃はタイムラインに流れてくる記事を1つ1つ丁寧に読んでいませんでしたか。そして、友達やフォローの数(繋がりの数)が増えるに連れ、流れてくる記事の量が増えてくると流石に全ての記事を読むことを諦めざるを得ない状況になっていることもまた現実としてあるのではないでしょうか。

また、幼少の頃は、新聞は最初から最後まで毎日熟読するものだと思っていました。しかしそれではいくら時間があっても足りませんよね。後になってから、新聞というのは見出しだけ見て気になる記事だけを拾って読むものだと知りました。つまり、「最初の15秒」とは記事の見出しの役割を果たし、それにより、その話は聴く価値のある話かどうかを判断するのです。

本書はタイトルの割には内容が散漫な印象を受けますが、著者がアナウンサー時代に培った「すぐにでも使える具体的で実践的なテクニック」が豊富に掲載されていますので、プレゼンテーションやスピーチの腕を磨きたい人にはお勧めです。


書名:話は最初のひと言で決めなさい
副題:長い話じゃ人は聞かない
著者:吉田たかよし
発行:中経出版/2004年2月19日
ISBN:4-8061-1971-7

自分はICとしてイケているか

日付が変わってしまいましたが、昨日15日はIC協会の月例セミナーがあり、参加してきました。実は今年初参加だということに直前で気付きました。今回のテーマは「キャリア転職のプロに聞く、企業が働きたいプロワーカーの条件 ~イケてるIC・イケていないICとは~」と題して、IC協会の立ち上げにも携わった丸山貴宏さん(株式会社クライス&カンパニー代表取締役)が登壇されました。

丸山さんはずっとキャリア採用&転職のコンサルタントとしてご活躍され、そのご経験を踏まえICとしてやっていける人の特性、やっていけない人の特性について事例を交えながらズバリ解説していただきました。様々なテーマがありましたが、ここではその中の一部をご紹介します。

企業がICを使うことのメリットはいくつかあると思うのですが、その一つとして専門性が挙げられます。私自身も最初はそうでしたが、自分に自信が無いとどうしても「何でもできます!」というアピールになりがちです。実際に何でもできて何でもやれるとしても、それをそのまま表現したところで特徴が見えず、受け手にとってはまったく刺さりません。(一方で、採用する側もまるでスーパーマンのようなハイスペックでオールマイティな人材像を描くこともありますね。)専門性というのは「○○だったらこの人」のような尖がった部分の事。まだまだ途上ですが、常にブランディングを意識して活動していきたいと思います。

今回の講演とその後の懇親会を通して伺ったお話は、最近読んだ本、そしてかつて読んだ本の内容とも重なっており、それぞれは全く異なる出自のはずなのですが全てつながりまして、特に最近はそのことに驚いています。どういう人が成功するのか、そしてどういう人が失敗するのか、やはりそれぞれ共通点があるようです。例えば、リアルに思い描いたイメージ通りに物事が実現していくということ。逆に思ってもいないことは実現しないということです。丸山さんも「潜在意識ってやっぱりあるんですよね」とおっしゃってました。そのことについてはいずれまた書きたいと思います。

 


丸山さんの記事がダイヤモンド・オンラインで読めます。
「転職で幸せになる人、不幸になる人」
http://diamond.jp/category/s-mtenshoku

「申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。」カレン・フェラン 著

何とも過激なタイトルに惹かれてつい手に取ってしまいました。最初は懺悔の手記かと思ったのですが、そうではなく(一部は懺悔もありますが、実際に潰したということではないようです)著者自らがコンサルタントとして携わった失敗事例と成功事例とに基づく研究の成果をまとめた本です。

世の中にはビジネスモデルや経営理論といったもので溢れており、状況によってはフレームワークとか、ソリューションとか、メソッドとか呼ばれることもありますし、コンサルファームに在籍していなくてもある種の資格試験に出題されることもありますので、それらのうちいくつかは知っているという方が多いと思います。ただ、例えば3Cや4Pなどの名前や内容は知っていても、それらが生まれた背景まで辿って理解している人は少ないかもしれません。(私だけでしょうか。)

本書は次のようなテーマを扱っています。

  1. 戦略計画
  2. 最適化プロセス
  3. 数値目標
  4. 業績管理システム
  5. マネジメントモデル
  6. 人材開発プログラム
  7. リーダーシップ開発
  8. ベストプラクティス

本書はこれらのモデルや理論の欠点をあげつらって溜飲を下げるための本ではありません。本書を読む限り、少なくとも1回はそれらのモデルや理論は効果を表し、成功を収めたものがほとんどです。ポイントはそれらのモデルや理論が「いつでもどこででも効果的」というわけではない点です。

モデルや理論の適性や、状況を見極めずにそれらを適用した場合にどのような悲劇が起こるかという悪いシナリオが事実に基づいて記されています。最後には、クライアントの立場で物を考えずに闇雲にベストプラクティスを当てはめようとするコンサルタントを避けるように警鐘を鳴らして締めくくっています。

これらのモデルや理論がうまく機能するためには。それぞれいくつかの前提条件があります。それらの前提条件が満たされていなければ当然ながらそれらに基づく活動は失敗します。前提条件の中には業種や業態といった固定的なものから、事業規模や従業員といった流動的なものまであります。

うまくいかなかった失敗事例では、単なる事の顛末の記録に止まらず、何故うまくいかないのか、その理由について分析しており多くの示唆を与えてくれます。また、それらのモデルや理論に頼らずに(むしろモデルや理論の方針とは正反対のことを実施して)成功を遂げた例も豊富に記されています。モデルや理論があくまでも「型」に過ぎないのだということを再び想起させてくれます。

2週間くらい前に買ってから既に2回通読しましたが、これからも度々読み返そうと思います。


書名:申し訳ない、御社をつぶしたのは私です。
副題:コンサルタントはこうして組織をぐちゃぐちゃにする
著者:カレン・フェラン
訳者:神崎朗子
発行:大和書房/2014年3月30日
ISBN:978-4-479-79433-2

自分の部屋へ引っ越そう!~「ヘヤカツ」のススメ~

引越しをすると、しばらくは物も少なく片付いていて、とってもシンプルで洗練されたライフスタイルを送ることができるのですが、漫然と暮らしているうちに物が徐々に増えていき、小奇麗だった部屋がいつの間にか散らかっていて気分が滅入るという経験はないでしょうか。特に社会人で独り暮らしだと、平日は仕事なので帰って寝るだけ、休日は寝ているか遊びに行く…というルーチンを続けていると、部屋が多少散らかっていても特に困ることはないのですが、ふと気づくと片付けようにもどうにも身動きが取れなくなっています。私は幾度か引越しを経験していますが、引越しというイベントの持つ独特の「リセット」感覚はなかなか得難いものがあります。

今回ご紹介するのは「部屋を考える会」というコミュニティが著作した「部屋を活かせば人生が変わる」と、その続編の「部屋を活かせば頭が良くなる」です。最初のうちは、一時期流行った「断捨離」や片付けメソッドの類かと思いましたが、そうではなくてあくまでも「部屋を活かす」という視点に立った活動、すなわち「ヘヤカツ」について、その手法と効果を紹介しています。

なぜ部屋が散らかるかというと、掃除しないから。なぜ掃除しないのかというと、掃除しにくい家具の配置だからということで、まずは掃除しやすいような家具配置にしましょうということを薦めています。「人生が変わる」「頭が良くなる」というのは言い過ぎではないかと感じましたが、満腹の時には何を食べようかとは考えないのと同じで、空間が満たされていればそこを満たそうとは思わないが、隙間が空いていればそこを何で満たそうかと脳が自然と働くということのようです。だから本棚も押入れも全てギチギチに詰め込むのではなく、7割ぐらいに留めておくのが良いようです。

そうなるとどうしても入りきらなくて溢れてしまうものが出てきます。でも、数年間使ってないものは必要のないものと割り切って、本当に必要なものに絞り込むというプロセスに取り組むと、意外と必要のないものが炙り出されてきました。よくあるのが「もしかしたらまた必要になるかも」という気持ちですが、必要になったらまた調達すればよいですし、本当に必要なものまで手放す必要はありません。ここは別に唯一の正解があるわけではないので、自分に合うやり方で取り組むのが良いのではないかと思います。

冒頭で、引越しのリセット効果について触れましたが、実際に引越しをしなければならないとしたらお金も時間もかかってしょうがないのですが、同様の効果を出す方法として「自分の部屋へ引っ越す」という考え方を提唱しています。何のことはない、ある部屋の家具を一旦別の部屋に移して、まっさらな状態から家具を再配置していくのです。引越しと違い、一区画ずつ再配置を繰り返していけばよく、これであれば新しい物件を探したりする手間もかかりません。自宅でもまさにこの取組みを始めているところです。

この本の良いところは、一人の著者の単なる独りよがりな提案ではなく、コミュニティの中で研究したアイデアについて実践した結果を、さらにフィードバックして磨き上げていった具体的なノウハウとなっているところです。「頭が良くなる」というのは一理あるとは思うものの科学的な根拠は分かりません。が、そこは本書の本質ではないです。本当に豊かな生活、豊かな人生とは何かを改めて考えさせられる本です。

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書名:部屋を活かせば人生が変わる
著者:部屋を考える会
発行:夜間飛行/2013年11月5日
ISBN:978-4-906790-05-0

書名:部屋を活かせば頭が良くなる
著者:部屋を考える会
発行:夜間飛行/2014年11月7日
ISBN:978-4-906790-13-5

横浜の中華街新年会にてIT業界を考えた

本日(校正している間に日付が変わってしまいましたが)、毎年恒例、JSDGの中華街新年会に参加してきました。去年はエントリーしておきながら(確か体調を崩してだったと記憶しています)ドタキャンしてしまったのですが、今年は無事に参加することが出来ました。しかも今年は中華街新年会としては過去最高の33名の参加がありました。

いつも色んな方と話が出来て刺激になるのですが、今回はたまたま隣席にいらしたITのコンサルタントとIT人材の話になりました。コの業界ではよく「ユーザ企業」「ベンダ企業」という呼び方がありますが、前者はITを利活用する企業で事業会社とも呼ばれることがあります。そして後者はITのシステムやサービスを提供する企業ということになりますが、アメリカ合衆国ではその従事者の割合が3:1なのに対し、日本では真逆の1:3であるという統計に基づく事実について教えていただきました。

その方に言わせれば「これじゃあ日本は勝てないよね」「技術者をユーザ企業に戻したい」ということになるのですが、少なくとも日本では過去に事業会社が情報システム部門を子会社化して切り離した経緯があり、その弊害が顕著であることは私自身も現場に出て肌で感じております。それに気付いている企業は既に内製化に舵を切っており、一度子会社化したシステム部門を本体に吸収した企業も知っています。以前も書いたかもしれませんが、そもそもSIというビジネスがもはやWin-Winの構造になっていないため、全てのユーザ企業が舵を切ればSIビジネスは消えるでしょう。そして舵を切らないユーザ企業はSIベンダと共に衰退していくと想像されます。

私自身もSIの仕事をしたことがありますし、SIの仕事をしている知り合いもたくさんいます。なのでなかなかこんな話はして来なかったですし出来ませんでした。でも、今日、このように話を伺い、きちんと考えておられる方がいると知って嬉しく思いました。

私は10年ほど前に、とある技術者コミュニティーに顔を出していたことがあり(数回限りでしたが)、とあるネットの記事を題材にこのテーマについて議論を交わしたことがあります。当時の私はまだバリバリの技術志向でしたから、アジャイルかウォーターフォールかという開発手法の話題として捉えていました。ところが、開発手法はビジネスモデルとも絶妙にリンクしていて、議論を交わしているうちにSIモデルはいつか終わるんだという認識を持ったものです。それ以来、どのようにこの業界でビジネスをやっていくかということを自分なりに考えてきました。

まだ明確な答えは見えていませんが、時々刻々と変化していくIT環境に合わせて、直接的であれ間接的であれ事業会社のサポートを行っていきたいと考えてきましたし、今もそのように考えています。内製化をしたいという企業があれば、それをうまくやるための方法を一緒に考えていきたいです。人とITとをつなぐ・・・ここは必ず押さえていきたいと思います。

(参考)
スルガ銀-IBM裁判から垣間見えた“SI時代の終焉”
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20120507/394881/

「アドラーに学ぶ部下育成の心理学」小倉広 著

一時期「モチベーション」という言葉が流行ったように感じた時期があるのですが、よく、教育や育成という文脈の中で、施す側であれば「褒めて伸ばすか、叱って延ばすか」、施される側であれば「褒められて伸びるか、叱られて伸びるか」という二者択一を見聞きします。そして「あなたはどっちのタイプ?」という問いかけが頻繁になされることによって「世の中にはその二択しかないのだ」という先入観を植え付けられてしまっていないでしょうか。例えば次のような問いがあります。どのように答えたらよいでしょうか。

あなたの部下もしくは後輩が、あなたの目の前で仕事を進めていました。見ると、明らかに要領の悪い間違ったやり方をしています。このままではミスが出るか、能率が悪く時間がかかってしまいます。そんな時、上司もしくは先輩であるあなたはどのように声をかけるでしょうか。

  • (A)『そのやり方はよくないね。こうやった方がいいよ』と教える
  • (B)失敗するかもしれないが、あえて何も言わずに黙っておく
  • (C)『もしかしたら、××のようなことが起きるかもしれないけど、その場合はどうする?』と未来を予測した質問をぶつけてみる
  • (D)『こんなやり方もあるけれど、どうかな?』と別の方法を提示して、それを採用するかどうかは相手の判断に委ねる

(本文より)

書名だけでは分かりませんが(カバーを見ると分かりますが)、本書は褒めない、叱らない(更に言うなら教えもしない)第三の育成方法を提唱しています。「そんなんで本当に育成なんてできるの?」と疑問に思いながら読み進めていくと、なるほどと思わず納得してしまう理由が書かれていました。考えてみると至極当たり前のことが書かれており、しかもどこかで読んだことがあったり、あるいは既に実践している方法だなと感じる部分も多くありました。ただし、それらは断片的であり、合理的な説明でもって体系的に整理できたという意味でも本書は読むに値するものであったと思います。

なぜ褒めても叱ってもいけないのか。この問いを考える時にふと思い出すことがあります。それはいつからか周囲が使い始めた「上から目線」という言葉。これは「あんたの物言いは上から目線だよ」という風に一種の侮辱に対する不満を表明する際に使われるように思います。「なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないんだよ」って思うこといっぱいありますよね。ああ、もしかしたらこの文章もそういう風に捉えられる可能性もあり気を付けたいと思いますが、人は上下関係において下に置かれようとされた場合にこうした不愉快な気持ちを抱くものではないでしょうか。そして「褒める」とか「叱る」というのはこういう自分が上で相手が下という関係を無意識のうちに作っている行為だということです。だから褒められても叱られてもダメだということなのだそうです。

そこで第三の方法とは、上から目線ではなく、相手と対等な関係を築き、相手を信頼するというものです。制約理論(TOC)を提唱したエリヤフ・ゴールドラット博士も「人は元々善良である」と主張しました。あれやこれや心配しなくても人はなんとか善くしようと心がけるものです。目の前の相手もその性質を帯びていると信頼するかどうか。「褒める」とか「叱る」というのはそういう本来人に宿っている善意を踏みにじる行為であり、そのような扱いを続けることでその人が本来持っている力を奪うことにつながるということなのです。

そうは言っても、簡単にできることではないと感じます。今まで「褒める」とか「叱る」という手段を意識して取ってきた人にとっては尚更でしょう。本書はアドラー心理学の考え方をベースにした部下育成のノウハウですが、単なる理屈ではなく著者の経験に裏付けられた実践のためのヒントが豊富に盛り込まれています。私も繰り返し読んで実践につなげていきたいと考えています。


書名:アドラーに学ぶ部下育成の心理学
著者:小倉 広
発行:日経BP社/2014年8月18日
ISBN:978-4-8222-5030-0

拙作ソフトが書籍で紹介されました!

拙作ソフトが書籍で紹介されました!

先日12/13に学研パブリッシングより発売された「エクセルパーフェクトテクニック350+α完全保存版」という書籍に「クロスラボラトリー」ブランドのソフトウェアが紹介されましたのでお知らせいたします。私にとってはちょっとしたクリスマスプレゼントになりました。

今回掲載されたソフトは、以前の「JPEG Image Filer」ではなく、Microsoft® Excel® のブックファイルの全シートの表示形式と表示倍率を揃え、かつ、全シートのA1セルを選択した状態にし、更にはブック中の先頭シートを選択した状態にする「Xls/xlsx File Unifier」というソフトウェアです。

「JPEG Image Filer」とは異なり、プライベートユースではほとんど使う局面はないと思うのですが、逆にビジネスユースではそれなりに使う局面があるのではないかと思っています。というのも、Microsoft® Excel® ブック形式のファイルを納品物や情報資産として利用する場合、ファイルを開いた時に不適切な位置が表示されてしまうと格好悪いので、ドキュメントの最後の仕上げとして体裁を整える作業を行うということがあると思います。そういった利用の仕方をする場合、対象のブックファイルが1つや2つではないので、それらを1つずつ開いて確認しながら直していくのは大変です。このアプリを使うことでその作業を軽減することができます。

「JPEG Image Filer」の場合は、いくつかのサイトが取り上げて使い方を紹介してくださっていますが(ありがとうございます)、「Xls/xlsx File Unifier」はそういったサイトは今のところ見当たりません。にもかかわらず、こうして書籍に掲載してくださったことはとても嬉しいことだと思っています。

この書籍は、データ分析やピボットテーブルなど、私もExcel®についてまだそれほど使いこなしていない機能についての解説も豊富で、せっかくなので私も本書を使って勉強してみようと思いました。Excel®は道具として使いこなせればビジネスでもかなり役に立ちますので、このような参考書をお持ちでない方は是非1冊手元に置いてはいかがでしょうか。

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書名:エクセルパーフェクトテクニック350+α完全保存版
発行:学研パブリッシング/2014年12月13日
ISBN:978-4056107302


講演・セミナーを円滑に進めるアイスブレイク

日付が変わってしまいましたが、昨日10日はIC協会の月例セミナーがあり、参加してきました。今回のテーマは「3分で心をつかむアイスブレイク」ということで、IC協会の会員でもあるマイソリューションズの山村祐里江さんを講師に招きワークショップを行いました。

アイスブレイクというと、講演やセミナーに全く参加したことない方にはイメージが湧かないかもしれないのですが、芸で言うと「つかみ」に当たる部分と言えば理解して頂けるでしょうか。つまり、参加者の緊張をほぐしてセッションを円滑に進めるためのテクニックです。講演やセミナーの中では脇役であるため普段なかなかフォーカスが当たらないものですが、私自身も数は少ないながら講演やセミナーで登壇した経験から、アイスブレイクは是非身に着けたいスキルであると感じていました。

私の中ではアイスブレイクも含めて事前に周到に準備しておくものと思っていたのですが、必ずしもそうではなくて、準備の不要なものであればネタのバリエーションをストックしておいて必要な時にアドリブで実施することもあるようです。何より、目的(セッションのテーマや参加者の属性など)に合わせてどんな手法を用いるかを選択すべきなんだなということを理解しました。

いずれにせよ、アイスブレイクは講演やセミナーの全体からすれば枝葉末節であり、まず考えるべきは講師自身がその時間・空間を楽しみ、笑顔で参加者と接することを心掛けるべきで、アイスブレイクはその延長線上において実施されて初めて効果があるものだということを認識しました。