前回に引き続き、WBSを作成する際に議論される問いについて考えます。
次に「項目は作業を分解したものか、あるいは成果物を分解したものか」という問いがあります。これは粒度に比べたらあまり話題に上がって来ない印象があって、私が作成するものも含め、いろんなWBSを見ていると同じレベルの項目の中に作業と成果物が混在しているものを見かけます。が、これはよくよく考えるとおかしな話です。そもそも作業は動詞であり、成果物は名詞だからです。これは単に文法的に語尾がどうなっているかというレベルの話ではなくて、作業は手段ないし過程であり、成果物は目的ないし結果です。だから基本的には作業と成果物が同列に並ぶということは無いのです。
プロジェクトというのはある目的の達成のために計画されるものです。従って、最終的に欲しいのは結果の方であって過程ではありません。とはいえ、成果物の名称だけ書かれていても、それを見た人が具体的な作業をイメージできなくて困るというケースもあるでしょう。だからつい作業を書いてしまったり、必要に迫られて作業を書くというのも止むを得ない話だと思います。そういう場合のひとつの方法として、「成果物を生み出す作業」を表記するやり方があります。
例えば、「調査」という項目があったとします。これは作業です。よって成果物が表現されていません。こういう時には「調査報告書の作成」という項目にしてしまいます。こうすることで成果物がイメージできるようになるし、調査報告書を作成するための「調査」の作業そのものもそこに包含されることになります。「調査」活動そのものが「調査報告書」という目的のための活動と明確に位置づけることができるわけです。
そうはいってもやはり成果物の作成という名目の作業だけで全ての項目を定義するのに違和感を覚えるという意見もあるかもしれません。そもそも成果物は作業の結果得られるものであって独立したものではありません。それにある作業の成果物(アウトプット)が別の作業のインプットになるものです。なので最初はWBSの形式に囚われずプロセス・マッピングを実施するようにしています。プロセス・マッピングとは一般的には業務プロセス定義の局面で用いられる手法のようですが、業務を構成するプロセスとプロセスの関連を業務を定義する目的で図示したものです。(そのバリエーションのひとつに業務フロー図があります。)通常は定常業務に対して適用するものですが、それをプロジェクト業務にも応用します。
プロセス・マッピングについての詳細は別の機会に譲りますが、このツールにより作業と成果物をネット状に繋げて全ての項目を洗い出すということをします。定義したプロセスに抜け漏れが無いことが担保できれば、WBS上に記載する項目が作業であろうと成果物であろうとあまり関係ありません。プロセス定義があればスケジュール表としては冗長な項目も慣れてくれば省略して記載しても構いません。要は「言われた通りに作るもの」ではなく「管理する人が管理しやすく、かつ抜け漏れがないもの」であれば良いのです。
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