ビジネスモデルキャンバス(BMC)で自社のビジネスを見直した

あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

ふりかえると2016年は弊社にとってちょっとした転換点だったかなと感じています。というのも7月と9月に参加したITコーディネータのフォローアップ研修にてビジネス・モデル・キャンバス(BMC)とバリュー・プロポジション・キャンバス(VPC)という2つのツールに出会い、これらのツールを使って弊社のビジネス(サービス)を見直すことができたからです。7月に受講した時の感想は「ビジネスモデルキャンバスの威力を体験してきました」というタイトルで記事を書かせていただきましたので合わせてお読みいただければと思います。

これまでの弊社のビジネスとして掲げていたものは次のようなものでした。

  1. ドキュメント作成サポート
  2. IT活用サポート
  3. 業務推進サポート
  4. システム開発サポート

これらは実績として充分であるものの、見えるサポートの粒度としては細かく現場寄りであり、これまでお付き合いのなかった範囲にもアピールしようとこれまでにも「ITリベンジ」「ITかかりつけ医」「情報システム・ドック」といった「サービス」という別の切り口でアプローチを試みました。それでもそのサービスを届けたい相手にうまく訴求できていなかったのではないかと感じており、ここ数年はどうしたものかと頭を捻ってきました。

ところが、ビジネスモデルキャンバスとバリュープロポジションキャンバスの演習を通して(元々提案営業のための研修で、顧客のビジネスを整理するためのツールとして紹介されたものだったのですが)これは自社のビジネスを整理するのに使えそうだと思い、試行錯誤の末、以下のようなサービスに落とし込みました。これらのサービスの具体的な内容についてはリンク先をご参照いただければと思います。

  1. ソフプロ™
  2. プロマネの右腕™
  3. かかりつけ!ITドクター™
  4. オンデマンドCIO™

実際に演習でも題材とし、演習後に真っ先に整理したのが前半の2つです。「プロマネの右腕」についてはサービス名だけはもう5年以上も前に考えていたものですが、具体的に深く掘り下げて内容を考えるということはできていませんでした。後半の2つは実は元々「ITかかりつけ医」というサービス名で展開していたものでしたが、ビジネスモデルキャンバスとバリュープロポジションキャンバスを使って整理していったところ、1つのサービスの中にやりたいことが2つ含まれていたということに気づき、2つのサービスに分けました。おかげでサービスの輪郭が明確になりましたが、こういうことが出来たのもツールの威力ではないかと感じております。

ところで、ビジネスモデルキャンバスがどういうものかというと、以下のようなフレームに書き込んでいくだけの簡単なツールです。これで整理することによってビジネスがきちんと回るかということを検証でき、自分がどのような価値を提案できるのかということを棚卸できたのは良かったと思います。後になって見直しが必要になった際にもベースの資料として活かせますね。

BMC

それぞれの箱の意味は以下の通りです。頭の中にあるビジネスモデルの要素をこのフレームに沿って書き出していきます。すんなり書き出せない箇所はまだ検討が不充分だったり、見直す必要がある箇所だということが判ります。

  1. CS:Customer Segments(顧客セグメント)
  2. VP:Value Propositions(価値提案)
  3. KR:Key Resources(資源・強み)
  4. KA:Key Activities(主要活動)
  5. CH:CHannels(販売チャネル)
  6. CR:Customer Relationships(顧客との関係)
  7. KP:Key Partners(パートナー)
  8. R$:Revenue Streams(収益の流れ)
  9. C$:Cost Structure(コスト構造)

なお、これらの成果をその研修の講師にフィードバックしたところ、昨年末にブログの記事にしてくださいましたので、こちらも是非お読みいただければと思います。そんなこと言ったっけ…?といった私の発言にまで気に留めてくださり、講師の視点を知ることが出来て勉強になります。

行動につながる学び方 ~アイディアを可視化し、他人に伝えてブラッシュアップする~
http://katsuyo-nakao.blogspot.jp/2016/12/blog-post_31.html

2016年多く読まれた記事トップ3

早いもので2016年も最後の1日となってしまいました。振り返ってみると今年はブログの投稿数が例年に比べて少なかったのですが、今年執筆した記事で良く読まれた記事トップ3を見てみましょう。

◆1位 「世界で一番やさしい会議の教科書」榊巻亮 著

2016年 1月 17日

知り合いのコンサルタント榊巻さんの著書の書評です。会議のファシリテーションについて書かれたものですが、各章ごとにストーリーとまとめが展開されるので大変読みやすく、ストーリー部分は漫画で描かれているので若手のビジネスパーソンにはお勧めです。絵柄は好みが分かれるかもしれませんね。

◆2位 プロセス・マッピングを用いたWBSの作り方

2016年 9月 28日

こちらはシルバーウィーク特集としてWBSについて執筆した記事の1つです。WBSの作り方というのはあまり参考になるものが無く、私自身が実際の業務で試行錯誤して作った過程をまとめて記事にしました。こちらは思ったより好評でしたので来年は続編を書こうかと考えています。

◆3位 ビジネスモデルキャンバスの威力を体験してきました

2016年 7月 9日

こちらはITコーディネータ協会が主催している集合研修に参加しての感想です。初めてビジネスモデルキャンバス(BMC)に触れ、その面白さに心を動かされました。もともとこの研修はBMCをコンサルティングに活用する目的として設計されたもののようでしたが、それを私は自分の会社のビジネスを見直すために使いました。

そして厚かましくも弊社のビジネスモデルをBMCに落とし込んで講師の方に添削をしていただき、おかげさまで弊社のサイトをリニューアルすることができました。そのことを講師の方がブログ記事にしてくださったのでご紹介します。

行動につながる学び方 ~アイディアを可視化し、他人に伝えてブラッシュアップする~

今年は弊社にとっても環境に変化のあった年でしたが、何よりも自社のビジネスを見直すことができたということが一番有益だったのではないかと感じています。

来年は心を入れ替えてもうちょっと投稿の頻度を上げたいと思います。皆様どうぞ良い年をお迎えください。

プロセス・マッピングを用いたWBSの作り方

これまでWBSの必要性やたびたび議論される話題を取り上げましたが、今回は、前回述べた「プロセス・マッピング」を使ったWBSの作成方法をご紹介します。

私が初めての現場で最初にWBSを作成する場合には、全ての成果物あるいは作業を洗い出すためにプロセス・マップというものをまず作成します。プロセス・マップを作ることをプロセス・マッピングと呼びます。私がネットで調べた限りではプロセス・マップについて決まりきった型は無いように見えました。少なくとも業務プロセスを図示して見える化したものを指していると思ってもらえば良いです。

よく見かける業務フロー図もそのひとつです。定常業務の業務改善ではプロセス・マッピングにより現状の業務を全て書き出して問題点を見つけるというアプローチを取ります。しかし、プロジェクト業務の場合は(似たようなプロジェクトを繰り返し実施するというケースはあるでしょうが)基本的には初めてやることなのでゼロベースで作成することになります。

ゼロベースと言ってもプロジェクトのゴールは決まっているわけですから、ゴールをまず明記します。例えば何かのサービス開発だったら「カットオーバー(あるいはゴーライブ)」というのがそれに当たりますね。決まりきった型は無いと述べましたが、私が使うときには独自にルールを設定しています。ルールとはいえ記法というよりは考え方のルールです。より良い考え方があればどんどん改良して構いません。尚、記法についてはDFD(データフロー図)の記法を拝借しています。

  1. まず、プロジェクトの開始(スタート)と終了(ゴール)を決める。実はゴールが明確であればスタートは何でも良い。「キックオフ」のようなものを書いても良いし、単に「スタート」でも構わない。外部のトリガーで始まるのであればそれを書く。
  2. 作業を楕円、成果物を長方形で表し、作業と成果物を矢印で結んでいく。この時、ゴールから逆に辿って、成果物を生み出すために必要な作業、作業のために必要な成果物…という風に。
  3. 作業には最低1つずつ入力になる成果物と出力になる成果物とが矢印で結ばれている必要がある。成果物を生まない作業は無いし、どの作業にも使われない成果物は無い。
  4. プロジェクトチームの外部に依頼する作業、または外部から受取る成果物については、その外部の主体を長方形で表し、プロジェクトチームと外部主体との境界線を破線で引く。
  5. 締切のある成果物にはその日付を長方形の外に書く。作業の担当者を楕円の外に書く。日数のかかる作業についてはその所要日数を楕円の外に書く。
プロセス・マップの例

プロセス・マップの例

このようにするとDFDとPERT図を組合わせたような図が出来上がると思います。参考までに過去に私が作成したプロセス・マップを説明用に改変したものを掲載します。これは私があるプロジェクトに途中から参画した時に、メンバーにヒアリングしながらホワイトボードに描いたものです。実際にはここに担当者や期日などが書き込まれたりしましたが、これによりプロジェクトメンバーの意識を合わせることができ、期日に間に合うか見えていなかった案件を無事に完成させることができました。

尚、この後このプロセス・マップを工程別あるいはマイルストーン別に区切って整理し、ガントチャートを作成します。本当に小規模なプロジェクトであれば(先ほどのサンプル・プロジェクトもそうでしたが)ガントチャートに書き換えずにこのまま進捗管理をしてしまうことも可能です。余談ですが、定常業務にこれを適用し、作図したものをさらに担当者別(あるいは部門別・会社別)にスイムレーン式に整理すると業務フロー図になります。

WBS作成の流儀は様々あるでしょうが、まだ作り方がよく分からないという方は是非参考にして、自分なりの作り方を確立していただければと思います。


WBSは作業を分解したものか、あるいは成果物を分解したものか

前回に引き続き、WBSを作成する際に議論される問いについて考えます。

次に「項目は作業を分解したものか、あるいは成果物を分解したものか」という問いがあります。これは粒度に比べたらあまり話題に上がって来ない印象があって、私が作成するものも含め、いろんなWBSを見ていると同じレベルの項目の中に作業と成果物が混在しているものを見かけます。が、これはよくよく考えるとおかしな話です。そもそも作業は動詞であり、成果物は名詞だからです。これは単に文法的に語尾がどうなっているかというレベルの話ではなくて、作業は手段ないし過程であり、成果物は目的ないし結果です。だから基本的には作業と成果物が同列に並ぶということは無いのです。

プロジェクトというのはある目的の達成のために計画されるものです。従って、最終的に欲しいのは結果の方であって過程ではありません。とはいえ、成果物の名称だけ書かれていても、それを見た人が具体的な作業をイメージできなくて困るというケースもあるでしょう。だからつい作業を書いてしまったり、必要に迫られて作業を書くというのも止むを得ない話だと思います。そういう場合のひとつの方法として、「成果物を生み出す作業」を表記するやり方があります。

例えば、「調査」という項目があったとします。これは作業です。よって成果物が表現されていません。こういう時には「調査報告書の作成」という項目にしてしまいます。こうすることで成果物がイメージできるようになるし、調査報告書を作成するための「調査」の作業そのものもそこに包含されることになります。「調査」活動そのものが「調査報告書」という目的のための活動と明確に位置づけることができるわけです。

そうはいってもやはり成果物の作成という名目の作業だけで全ての項目を定義するのに違和感を覚えるという意見もあるかもしれません。そもそも成果物は作業の結果得られるものであって独立したものではありません。それにある作業の成果物(アウトプット)が別の作業のインプットになるものです。なので最初はWBSの形式に囚われずプロセス・マッピングを実施するようにしています。プロセス・マッピングとは一般的には業務プロセス定義の局面で用いられる手法のようですが、業務を構成するプロセスとプロセスの関連を業務を定義する目的で図示したものです。(そのバリエーションのひとつに業務フロー図があります。)通常は定常業務に対して適用するものですが、それをプロジェクト業務にも応用します。

プロセス・マッピングについての詳細は別の機会に譲りますが、このツールにより作業と成果物をネット状に繋げて全ての項目を洗い出すということをします。定義したプロセスに抜け漏れが無いことが担保できれば、WBS上に記載する項目が作業であろうと成果物であろうとあまり関係ありません。プロセス定義があればスケジュール表としては冗長な項目も慣れてくれば省略して記載しても構いません。要は「言われた通りに作るもの」ではなく「管理する人が管理しやすく、かつ抜け漏れがないもの」であれば良いのです。


WBSは誰がどこまで作るべきか

5年前「炎上プロジェクトから学ぶセミナー」というタイトルのプロマネ向けの講習を友人の会社と共同で開催し、それからだいぶ経ちました。それ以来私は、参加者のアンケートなどを基に「より効果の出るテーマは何か」と考えてきました。その結論の一つが「WBSの作成」です。前回の記事で「なぜWBSを作成しなければならないか」について述べましたが、WBSは簡単そうに見えるためか、きちんと作り方を教わることも無いまま作らされることが多いように感じています。そこで、私なりのWBSの作り方を書き留めておきたいと思います。あくまでも私のやり方ですのでこれが正しいやり方というわけではありませんが、必要としている方にとって少しでも参考になればと思っております。

さて、WBSの書き方・作り方の前に、「誰がWBSを作るべきか」という問いがあります。「WBSを作れ」と言われてもその必要性を認識していなかったり、仮に必要性を認識していたとしても(以前お伝えしたように)「見える化」しないタイプの人は全く作らないか、なんとか誰かに作らせて少なくとも自分は作らないで済まそうとするのではないでしょうか。

しかし、今のところ私の考えでは、複数の会社が関わるならそれぞれの会社で、複数の部門が関わるならそれぞれの部門で作成すべきです。もっと分かりやすく言えば、全体で1つではなく、管理の単位(便宜的にチームと呼びます。きっと組織の文化によって呼称は異なるでしょう。)それぞれに1つずつのWBSがあるべきです。(もちろん社内の小さなプロジェクトなら1つあれば充分ですね。)そして、チームリーダーの責任でWBSを作るのが良いと考えます。何故ならWBSは、自分のチームが作らなければならない、あるいは実施しなければならないことをまさに網羅的に表現したものだからです。

だから、自分たちの作るべき成果物、やるべき項目を漏れなく列挙し、実作業の責任者としてそれをスケジュール化します。もちろん他のチームと連携しなければならない項目についてはマイルストーンの摺り合わせも必要ですが、基本的には他のチームの作業はそのチームが管理すべきことと考えます。だから他チームの作業そのものを項目化するのではなく、作業に係る他チームとのやり取りを項目化して、期日を両者で合意すると良いでしょう。

次に「どの粒度まで表現すべきか」という問いがあります。これは私も良く訊かれますし、他の人が訊かれているのを耳にしたこともあります。それだけ答えを探してもなかなか見つからない問いなのだと思います。中にはあらゆる作業、あらゆる成果物を細目に落とすべきといったアドバイスもネット上で見かけます。私もこれといった答えを持っているわけではないのですが、これだけは言えます。それは「管理する人が管理しやすい粒度で」ということです。項目が大まか過ぎて日々の状況把握に耐えられないようではいけないし、逆に細か過ぎて全体が俯瞰できなくなったりメンテナンスの負荷ばかり高くなっても本末転倒だからです。最初から完璧なWBSは作れなくても、慣れてくればその辺りのサジ加減は会得できると思います。

また、対象のプロジェクトや、そのプロジェクトを実施する組織によってその管理のやり方も異なってくるでしょうから、画一的な「正解」に凝り固まらない方が良いのではないでしょうか。WBSをきれいに作ることが目的ではないし、まして管理することが目的でもないのです。まったく初めての取組みであって勝手が分からないようなケースは本当に検討事項の一つ一つまで細かくしないと危ないかもしれないし、類似のプロジェクトを経験していればそこまで細かいと冗長さを感じることもあるでしょう。そこはWBSを利用する本来の目的に合わせて柔軟に粒度を調節できることが望ましいと考えています。

より具体的な作り方に関する問いについては次回に続きます。


なぜWBSを作成しなければならないか

プロジェクトに携わると必ずと言って良いほど「WBSを出して下さい」と言ったり言われたりします。WBSとはWork Breakdown Structureの頭文字をとった頭字語で、プロジェクトを計画する際によく使われるツールですが、多くの人はWBSを作る立場になる前に少なくとも1つ以上のWBSを見たことがあるのではないでしょうか。

ところが、自分がWBSを作る立場になると、WBSの作成は簡単そうに見えて意外と難しいということに気づくケースが多いように思います。少なくとも私はそうでした。

以前にも書いたように、たまたま参画したプロジェクトのPM(プロジェクトマネージャ、プロマネ)が「見える化」をしないタイプだとしたら、おそらくWBSは存在していない(作られていない)でしょう。そういうプロジェクトは概して無計画で、出たとこ勝負であり、ノリ重視であったりします。人生は出たとこ勝負で良いかもしれませんが、プロジェクトとなれば(当人がプロジェクトのオーナーで無い限りは)そういうわけにもいきません。そういう現場が好きな人以外は、そのようなプロジェクトに間違って参画してしまうとそれなりに苦しい時間を過ごすことになります。

「プロジェクトは計画通りにいかない」という人がいます。もちろんそのとおりだと思います。プロジェクトには大なり小なり想定外のイベントは付物で、事故と言ってもいいでしょう。しかし、だからといって計画を立てなくて良いということにはなりません。それは何故でしょうか。

WBSはプロジェクトの完了に必要な要素を全て洗い出したものです。多くの場合、洗い出した項目とガントチャートを組合せてスケジュール表として作成します。(以降、WBSといえばスケジュール表を兼ねているものを指す)だから、WBSがあれば、

  • そもそも何をしなければならないか(全体の規模感)が分かるため、心構えができる。
  • 何をいつから始めれば良いかが分かるため、気付いたら時間切れという事態を避けられる。
  • 各作業の全体の中の位置付けが分かるため、次の作業を意識して取組むことができる。
  • 先々の予定を把握することで、余裕を持って作業に取組むことができる。
  • 結果的に、生み出す成果物の品質が高くなり、プロジェクトの成功確率が高まる。

…と、このようなメリットが期待できるのです。逆にWBSが無ければどうなるでしょうか。

  • 何をしなければならないか「分かったつもり」になっているため、必要な項目が漏れる。
  • 何をいつから始めれば良いか分からないため、項目を思いついた時点で既に時間切れの場合がある。
  • 全体の中の位置付けが分からないため、1つの作業に没頭してしまい、目的と期限を見失う。
  • 先々の予定が分からないので、差し迫ってない項目は放置し、差し迫ってから着手する。
  • そのため、突貫工事で低品質の成果物を生み出し、高稼働でコスト増またはスケジュール遅延となる。

…と、このようなデメリットが想定されるのではないでしょうか。ここでは私の思いつく限りを列挙しましたが、きっと皆さんはそれぞれの状況下でそれぞれのメリット・デメリットを挙げることができるでしょう。突き詰めていくとWBSの有無がプロジェクトの成否だけでなくプロジェクトに関わる人たちに影響をもたらすと言えます。


「長良川おんぱく」に学ぶビジネスの作り方

先週の三連休は、いつもお世話になっているITコミュニティ「JSDG」の全国大会が「岐阜から発信するITと仲間づくり」というテーマで開催され、私も会員として参加してきました。研修のアジェンダは以下の通りです。

  • 基調講演「岐阜長良川のほとりから発信しつづけてきたこと」NPO法人ORGAN代表 蒲勇介さん
  • 会員講演「全国の鵜飼事業に見る地域活性化のアプローチ」JSDG会員・森松さん(ゲスト:結の舟代表 平工顕太郎さん)
  • 招待講演1「インターネットと音楽」プレスサポート・NEW VINTAGE RECORDS代表 小島眞さん
  • 招待講演2「意外と稼げるロンドン地下鉄バスキング」ギタリスト 土門秀明さん

大会ロゴ(右)と鵜飼の切り絵

会場に飾られた切り絵も素敵でした


会自体はオープンな組織であるものの、研修会の内容によっては他言無用を参加条件とするケースもあります。今回の全国大会もそれに該当するものでしたが、基調講演だけは実際にUstreamでも中継されましたし、そこだけはオープンにして良いという幹事の許可も頂ましたので、ここに総括してみたいと思います。

まず今大会全体を通しての感想ですが、一応のテーマは掲げられているものの、それとは別にどの講演についても聴きながら「これってビジネスを生み出すプロセスだよなぁ」と感じました。基調講演では「長良川おんぱく」をコーディネートしているNPO法人ORGAN代表・蒲さんが「おんぱく」に辿り着くまでの試行錯誤についてお話ししてくださいました。

実は、他の講演も「ビジネスが軌道に乗るまでの試行錯誤」という要素が含まれており、参考になっただけでなくたいへん励まされ勇気付けられました。

私がこのように独立して会社をやっていると「不安はないんですか?」と訊かれることがよくあります。ビジネスを始める多くの不安は恐らく「失敗したらどうしよう」というもので、特に新しいことを始めようとした場合には、うまく行くかどうかも分からないアイデアに投資だとしても大金をつぎ込むのは全てを失う可能性を考えると勇気がいるものです。

そこで、そのリスクをいかに減らすかということが主要な課題になりますが、ある書籍によると既存の主要な事業を行いつつ全体の10%程度の資源を新規事業に投下するというのが良いようですが、その「ちょっとだけ試せる」という場が失敗のリスクを減らしつつ新しい取り組みに挑戦するための環境として必要とされています。それこそチャレンジしたい人が気軽にチャレンジできる場。「長良川おんぱく」もそんなビジネスインフラの一つとして企画・運営されています。

当社でも2年前にITサービスのプロトタイピングを行うサービスをトライアルで実施しました。ITサービスは一般的に他の産業と比べると初期投資が少ない業種と言われていますが、それでもシステムを構築するにはそれなりの投資が必要となってきます。特に新しいサービスというのはアイデア段階でベンダーに話を持っていってしまうと、(ベンダーに要件定義が出来る人がいればよいですが、そうでない場合は)要件定義に時間とお金がかかった上に、出来上がったシステムが使い物にならないという悲劇は良く耳に入ってきます。

そこで、当社がお客さまのアイデアをプロトタイピングによってより鮮明にすることで、委託されたベンダーにとっても本業の開発以外のところでリソースを投下する必要がなくなり、結果的にコストも下がって委託側も嬉しいという状況が生まれるのです。プロトタイピングはコンサルティングの一環としてオンライン/オフラインの打合せを繰り返しながらアイデアを施策に盛り込むというサイクルで進めていきます。最終的には開発ベンダーにつなぎますが、あるいはプロトタイピングを経た結果として投資をしないという判断もあるでしょう。このサービスも「ちょっとだけ試せる」場として、また意思決定のツールとして利用していただければ光栄です。

長良川おんぱく
http://nagaragawa.onpaku.asia/

NPO法人ORGAN
http://www.organ.jp/

夜は参加者や講演者の皆さんと共に鵜飼を楽しみました。結の舟代表の平工さんだけはお仕事の都合で帰られましたが、今年もご挨拶できてよかったです。ますますのご活躍を!

結の舟
http://yuinofune.com/

ビジネスモデルキャンバスの威力を体験してきました

今日はITコーディネータの実務研修に参加してきました。テーマは「提案営業のための『戦略的IT経営』実践術」ということで、ビジネスモデルキャンバスが中心の演習でした。講師は熊本を中心に活躍しておられるITコーディネータの先輩・アイティ経営研究所代表の中尾克代さん。普段からビジネスモデルキャンバスを活用したコンサルティングを行っているそうです。

ビジネスモデルキャンバスというのは名前の通りビジネスモデルを書き出すフレームワークで、ビジネスモデルの現状を把握したり変革を起こすためのツールの一つです。「ビジネスモデルキャンバス」という言葉は数年前に耳にしたことがあったのですが、ブームに乗れなかったというか正直なところ「本当に効果があるのかな?」とずっと懐疑的な態度でいました。ツールについての詳細はネットの記事や書籍等に譲りますが、今回の演習を通して感じたことをお伝えしたいと思います。

演習は参加者同士で相互にヒアリングし、ビジネスモデルキャンバスに落とし込んでいくというもの。私も相手にヒアリングしてビジネスモデルキャンバスを作成しましたが、逆に私もヒアリングされて私のビジネスモデルを整理していただきました。このツールは9つの要素で構成され、それぞれを質問して埋めていきます。質問に対する回答がちょっとポイントがずれてしまったり書き出す時の表現が難しいと感じた個所もあります。どんなツールもそうですが、思い通りに使えるようになるためにはそれなりに練習が必要ですね。

このツールの良いところは何と言ってもシンプルな点。商品やサービスの本質をズバリ表現することができます。トヨタ式のA3用紙1枚に通じるところがありますね。1枚の用紙に整理すると全体を一瞬で見渡すことができ、書き出した内容に違和感があればすぐにわかります。私もヒアリングを受けながら、ああかな?こうかな?と、出来るだけ端的に答えるようにしていましたが、インタビュアからの鋭い質問を受けて思わずウ~ンと唸ってしまう場面もありました。

次に、自分のビジネスモデルキャンバスをベースに課題を抽出するという演習を行ったのですが、演習用のシナリオが用意されていなかったため参加者のリアルな課題を共有することが出来ました。私の場合も課題だと思っていたことが真の課題ではなく、実は別に課題があったという発見もあり、まさにツールの効果を実感したところです。ビジネスモデルキャンバスは、顧客(相手)の現状を把握して課題を抽出し、新しい戦略を描いていくという目的だけではなく、自分自身のビジネスを振り返る目的にも使えるということが分かりました。そういう意味では今回の研修が、これまで受講したITコーディネータのどの研修よりも有意義でした。


アイティ経営研究所
http://www.itbizlab.jp/

メモを取る資質

最近Facebookで流れてきた記事にインスピレーションを受けて、私の思うところを書いてみたいと思います。

(元の記事はこちら)
先輩の「メモを取れ」は絶対的に正しいアドバイス。

「メモを取ること」の是非は色々と言われていますが、私もステップアップしたいのであればメモを取るべきと思っています。もちろん、この記事のように何の目的でメモを取るのかが明確でなければ余り意味のない作業になってしまいますので、何をするにも目的意識を持つことは大事かなと思います。例えば、私が一番無駄なメモだと思うのは、何かを見れば書いてあることなのに、人が説明していることをひたすら書くというものではないでしょうか。そういう事柄は書いてある方を見れば済むので自分では書かない。

むしろ、どこにも書いていないこと…特に話している相手や、話を受け止めた自分自身の思考のプロセスを書くことは後でふりかえった時に役立つと思います。そこに後で自分が考えたことを付け足したり整理して、より思考を発展させ、新しい施策・取組みのアイデアの源泉にしています。メモが有れば、一旦思考を中断しても、またそこから再開することが容易にできます。メモが無ければどこまで考えたっけという「巻き戻し」をしなければならず、これでは時間がいくらあっても足りません。

メモの取り方もそれが打合せ(会議)なのか講演なのかによっても多少変わってきますが、基本は同じです。会議の場合は直近の課題について話し合われることが多いので、メモの内容がすぐに活かせる場合が多いでしょうが、講演の場合はもっと一般的な内容になってしまうためふりかえる機会は少ないかもしれません。しかし、そうやって思考の種を書き記し、時々読み返すことで思わぬひらめきが浮かんでくることだってあります。もしメモが無ければこのようなことは起こりません。

メモを取るということは漫然と行っている限りはとても面倒くさく感じられるものです。そこで、メモを取る目的を自分なりにはっきりさせ、何をメモし何をメモしないかをはっきりさせる。あとは習うより慣れろで、時々ふりかえりながら、どうすればより効果的なメモになるかを考えながら実践していくことが大切なのではないかと考えています。

余談ですが、最近ではペーパーレスの時代のためか、ノートの代わりにパソコンを打合せや講演に持参し、キーボードを打ってメモを取る人も見かけますが、私はノートにペンで書く方が好きです。それは、ノートの方がより自分の思考が素早く反映されるからです。もっとも、最近ではPCが搭載されたペンタブレット(専用のペンでメモを取れる)というものも登場してきているので、今後はそういった手段もアリかなと思っています。


AIに使われるな、AIを使いこなせ

本日19日はIC協会の月例セミナーが開催され、3カ月ぶりに参加してきました。本日のテーマは「未来から考えるICにとっての5年後、10年後の市場の変化(AI時代のトレンドの波に乗るICの働き方とは)」ということで、IC協会の会員でもあるニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役の水野操さんが登壇されました。水野さんは「あと20年でなくなる50の仕事」という衝撃的なタイトルの書籍も執筆されており、本日はその内容も交えてお話しくださいました。

20年後というと2036年。あまりに未来過ぎてイメージしにくいですよね。今年生まれた赤ちゃんが成人する頃です。今私たちが従事している仕事はどのようになっているのでしょうか。かつて工業化がブルーカラーの職を奪ったようにAI(人工知能)がホワイトカラーの職を奪うというような話を耳にしますが、正直なところどこまでAIというかコンピュータが侵食してきているのかは誰も知りません。少なくとも想像以上にAIが進化してきているのだろうということは想像できます。

昨今でも自動車の自動運転のニュースはよく耳にします。もし自動運転が法的にも技術的にも確立されたらまさしく運転手という職業は無くなるでしょう。それだけでなく考える仕事や判断する仕事さえもコンピュータに置き換わっている可能性すらあります。つまり、たとえ今ホワイトカラーの仕事に従事していたとしても、決して安泰ではないという時代が目の前にやってきているということです。

私のような働き方をしていると特にそうなのですが、一つの仕事に固執しているとやがては仕事を奪われる(失う)ということになりかねません。しかし、職業とはそもそも何なのでしょうか。一つの側面としては日々の糧を得る手段ということになるのかもしれませんが、結局はニーズがある(=買ってくれる人がいる)から職業として成り立つのであって、ICとしては必然的にどのようなニーズがあるかを追いかけていくということになるのだと思います。

最後に水野さんはハッとさせられる問いを投げかけられました。それは「AIに仕事を奪われることはつらい事か?それは何故か?」というものでした。今の私の答えは「NO」で、それは社員を雇う代わりにAIを使えばステップアップできると考えるからです。

私は「どんな仕事をしているのか」という問いが正直苦手で、一言で答えるのは大変難しいと感じています。それでもあいさつ程度であれば「IT関連」と答えれば充分なのでそう答えるようにしていますが、必ずしもITは必須ではないよな~と思っていたりします。ITに限らず求められることに対して必死で答えていく(=課題の解決をお手伝いする)ことをここまでやってきたということなのかもしれません。個人的にはちょうど自分がやってきた仕事の棚卸をしたいなと思っていたところでしたので、今回は大変タイムリーなお話を伺えたと思っています。