「Web3の教本」が販売終了、販売分は回収へ

プロジェクトオーガナイザの吉田聖書よしだみふみです。

7月25日に、IT関連書籍の出版を行っている株式会社インプレスがプレスリリースを出しました。それによると、7月20日に発行した「いちばんやさしいWeb3の教本」という書籍を販売停止し、販売した分は回収するということです。

プレスリリースはこちら。

書籍「いちばんやさしいWeb3の教本 人気講師が教えるNFT、DAO、DeFiが織りなす新世界」の回収について(2022/7/25 株式会社インプレス)

これ、もうSNSではすごく話題になっているので、IT業界で仕事をしている人であれば今更説明する話でもないかもしれません。何でSNSで話題になったのかというと、どうも、インプレス社がプロモーションの一環として、本書の一部を誰でも無料で読めるように公開したので、それで狙い通り瞬く間に拡散したのだろうと思われます。

拡散したのは狙い通りだったかもしれませんが、ベクトルが逆向きだったようですね。つまり、内容を絶賛する方向のベクトルではなく、内容に誤りがあるという指摘や、酷過ぎるという批判だったということです。私もSNSで拡散されている部分をチラッと読んでみましたが、「こんなのが許されるんなら俺でも書けるわ」って思った方も多いのではないでしょうか。

普通はちょっとした誤りであれば正誤表を公開して終わりにするところですが、コストをかけて出版したものをコストをかけて回収するということですから、そういう問題ではないという判断(ある意味英断ですけれども)なのでしょう。

プレスリリースでは、今回こうなった要因は、書籍の制作時に外部の有識者にチェックしてもらわなかったことが大きいと書かれています。ですが、私個人的にはチェックの問題というよりは企画の問題ではないかと思いました。あるいは、企画でもターゲットは問題なかったんだけれども、具体的なコンテンツ制作の体制に問題があったのかなと思います。いずれにせよチェック以前の問題かなという所感です。

ターゲットは本のタイトルに「いちばんやさしい」とあるように、少なくともこれからWeb3のことを知りたいと思う人、中でもIT業界にあまり詳しくない人向けなのかなと推測します。ですが平易に物事を伝えるというのは簡単に見えてこれが大変難しい仕事です。まず、伝える側が伝える対象のことを正しく、深く理解していることが前提です。その上で、どうやったらその分野に詳しくない人でも理解できるかということを考え抜く必要があります。


※ この記事は、先日公開した以下の音声コンテンツを基に編集したものです。


ところで、私は理工系の大学へ進学した時、初期の講義で「高校で教わったことは嘘です」と教授が話したことに衝撃を受けました。そのことを高校時代の恩師にも何かの折に話したんですが、学校で教える内容というのは省略があり、心苦しいけれども、嘘も方便と割り切っているんだと返してくれました。

これは何も理工系の大学に限った話ではなく、私たちが大人になってから小学校の教科書を読めば、具体例を挙げるまでもなく、そういった省略は至る所に見られると思います。分かりやすくするということは省略があるということです。細かいところは端折って、正確性を犠牲にする代わりに理解しやすくするということです。

ただ、明らかな誤りは別です。省略と誤りを混同すべきではないと思います。省略というのは枝葉を落として幹だけにするということですが、誤りというのは途中から接ぎ木しているようなイメージでしょうか。あるいは植物ですらないのかもしれません。

今回の件で、インプレス側は望みをかけて、著者が書き直したものを有識者にレビューしてもらったそうなんですが、回収の判断が下されたということは致命的な誤りが改善されなかったということなのでしょう。



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