第4回・炎上PJから学ぶセミナー開催報告

昨日、11月18日(金)に「第4回 炎上PJから学ぶセミナー」を開催しました。会場は東京都立産業貿易センター浜松町館です。朝は晴天とはいきませんでしたが、寒すぎず爽やかな気候でした。

2011111801午前の第1部は前回同様にWBSの作成方法と活用方法について学ぶプログラムです。私が実際に経験したデータセンターの移転プロジェクトを基にしたシナリオを用意しました。そしてシナリオのある時点において、そのシナリオに登場するリーダーになったつもりで実際にWBSを作っていただきました。

次に、テーブルごとにディスカッションを行いました。WBSを作るに当たってどのように考えてWBSを作成したか、あるいは普段はどのようにWBSを作っているか、どのような点で苦労しているかなど、講師、参加者それぞれの考えや体験を共有しました。

今回は前回と違って初めてWBSを作るという方が見えた一方で、普段からWBSを使っておられる方も見えて、演習で書き出される内容にもその違いが見て取れました。それだけに説明もどこまで噛み砕くかという点で腐心しましたが、運営側にとっての課題も浮き彫りになりました。

2011111802また、不本意ながら、午後予定していた第2部については人数の都合上、開催を見送ることにいたしました。演習が効果的であるためには適正な人数があるので難しいのですが、合意形成というのはプロジェクトの中でも重要なテーマですので、是非別の機会に実施したいと考えております。

尚、次回は年明けの予定です。これまでとはまた違った展開になりそうです。今後ともよろしくお願いいたします。

TPP論争に見る、単純化の罠(わな)

日本経済新聞のマーケット総合面に「大機 小機」というコラムがありますが、10日付では「TPPはこれからが本番」という興味深いタイトルでしたので、今回はこのコラムを基に考えてみたいと思います。

私がこのブログ記事の見出しに含めた「単純化」という言葉は、先ほどの新聞コラムで言うところの「白か黒か」、似たような表現では「All or nothing」「0か1か」「0%か100%か」「零点か満点か」。つまり、実際には複雑で多様な構造であるのに、それを単純な構造とみなして歪めてしまうことを指しています。

確かに、複雑で混沌とした対象を理解するには、両極端の例を考えてみるというプロセスは悪い選択肢ではありません。しかし、分かりやすいためにその両極端が独り歩きしやすく、そうなってしまうと対象をありのままに捉えることが難しくなってしまいます。TPPの論争では実際にそうなってしまいました。

TPP賛成派はTPP参加のメリットと不参加のデメリットを主張し、一方、TPP反対派はTPP参加のデメリットと不参加のメリットを主張しています。そして、お互いに話を聴こうともせず一歩も譲らない…そんな硬直化した論争、それは全く議論になっていません。賛成派だけの集会、あるいは反対派だけの集会の存在がそのことを良く表しています。

冒頭にご紹介したコラムにも書かれていましたが、TPPは仮に参加しても参加して終わりというものではありません。参加した後どうするのかが重要なのであって、参加するのが是か非かという二元論では語れないのです。そんな当たり前で重要なことが、単純化によって見え難くなってしまっているのが現状ではないでしょうか。

これは何もTPPに限ったことではありません。ビジネスの現場では日々、いや時々刻々と判断を迫られます。その時、0か1かという単純化の罠に陥らないように気を付けたいと思います。


大勢で同じ問いを共有し、議論を深めた二日間

昨日と本日の二日間、小田原(小田原市民会館)にてJSDG第12回全国大会が開催され、参加してきました。全国大会というのは毎年開催されている文字通り全国規模のイベントで、一泊二日で行われるのが通例です。ちなみに昨年は岡山の玉野というところで開催されました。

今年のテーマは「繋(つな)ぐ」。基調講演はオリンパス株式会社 コーポレートセンター IT本部長の北村正仁さん。「グローバル化時代における日本の『IT現場力』を再考する」というタイトルで、事業環境の変化と、その変化に対する自社の取組みについてお話しをされました。単に事例の紹介ということだけでなく、どういった考え方で取り組んだかという抽象化されたエッセンスについても喩えを用いてお話しくださり、後の時間でも頻繁に引用されるほど分かりやすく有益なご講演でした。特にラーメンやカレーが既に日本食であるという例を挙げ、「鎖国か開国かの二者択一ではなく、日本流にアレンジしていけばいい」というコメントはどこかタイムリーでもあり、なるほどと思わされました。北村さんは上級シスアドの資格をお持ちだという点も、JSDGのメンバーにとっては親しみを感じられて良かったですね。

その後は会員の発表が2コマあり、恒例のリレースピーチが行われました。リレースピーチというのは、一人1分間の持ち時間で、参加している一人一人が全員の前で話すというものです。今回は70人弱参加されていましたので、一人1分とはいえ60分以上を費やすコンテンツです。普段お目にかかれない方の近況を伺うことができ、その後の懇親会で話すネタを収集する場でもあります。懇親会は研修会場近くの「万葉の湯」で行われました。料理もお酒も美味しく、初めてお会いする方や久しぶりにお目にかかった方ともお話しをすることができ、また、日ごろ抱えている課題のヒントをたくさんいただくことができて大変有意義な時間でした。そして二次会へ。ここでもさらにディープな話題について情報交換を行いました。本当はもっと話していたかったのですが、宿の門限もあり、私はそこまでで休むことにしました。

二日目はワールドカフェで意見交換を行いました。私はワールドカフェは3回目なのですが、テーブル数が13と、これまでにない規模でした。問いは「10年後につなぐために、今、シスアドは何をすべきか?」というもので、開催に先立って午前中には、このワールドカフェのための共通の土台となるセッションがありました。そのセッションを聴いた時点では、与えられたこのテーマはふさわしいなと思えたのですが、いざダイアログを始めてみるとこれがなかなかとっかかりがないのです。極端な例では「何もしない」なんていう意見もありましたね。(シスアドならどんな状況に陥っても成果を出すからという前向きな意味でしょう。)

私がいたテーブルでは、10年前どうだったっけという振り返りと、10年後どうなっているだろうかという予測についてはそこそこ意見が出てくるのですが、そもそもの問い「何をすべきか」になると話がストップしてしまう。ワールドカフェは収束ではなく発散の手法なのでやむを得ないのかもしれませんが、そもそもの問いについての議論が掘り下げられなかったのが心残りでした。

その中で私が得た気付きは何だったか、改めて振り返ってみました。

  • 最初はふさわしいと思えた問いでも、考えを深めようとした時に深められなかった場合は、問いがふさわしくない可能性がある。
  • 本来話さなければならない話題がとっつきにくい場合、自然と話しやすい話題に逸れてしまう。(水は高いところから低いところに流れる、の応用)
  • その場合、逸れた話題を軌道修正しても、問い(前提)を見直さない限りはまた直ぐに逸れてしまう。
  • 明記されていないことは行間を読む(推測する)のではなく、確認すべきである。

また、私自身のシスアドに対する考えですが、シスアドは今後、ビジネスやITの環境の変化に対応して立ち位置も役割も変わっていくんだろうと思います。ただ、その時、その立場・役割の人(人材像)をシスアドと呼ぶのが果たして適切なのだろうかという疑問も持っています。

最後は幹事長の挨拶で締め括られました。来年もこのような充実した大会が開催できるといいですね。