アクセスを集中させないキャンペーンのサービス設計

プロジェクトオーガナイザの吉田聖書よしだみふみです。

3月9日に、日本航空(JAL)がプレスリリースを出しまして、同日の午前0時から開始した航空券タイムセールをシステムダウンが理由で中止したと発表しました。

「JALスマイルキャンペーン」国内線航空券タイムセールの販売中止について(2023/3/9 日本航空)

まず、このタイムセールがどういったものだったかというと、3月9日0時から3月11日24時直前までの3日間、ゴールデンウィークを除く5月末までの国内線チケットが一律の価格で購入できるというものでした。どうも、JAL側が想定していた以上にアクセスが集中したようで、過負荷によってシステムがダウンしたようです。

JALの公式サイトには、プレスリリースとは別にお知らせが掲載されていまして、そこにはより詳しい事情が記載されています。それによると、ダウンしたシステムを復旧して、タイムセールを再開しようとしたけれども、有効な対策が打てないと判断して中止を決めたとのことです。根本原因として「事前の想定・準備において当社の見通しが甘かった」と記載されています。

【お詫び】国内線航空券タイムセールの販売中止について

この事故は少し状況が掴みづらいですね。いくつか論点があるんですが、まず、想定の時間当たりアクセス数と実際の時間当たりアクセス数がどうだったか。もちろん、素直に読めば「想定を遥かに上回る」アクセスがあったということです。ですが、穿った見方をすれば、有効なアクセス数が想定の範囲内にあるうちにダウンした可能性もあります。

次に、システムそのものに欠陥があったかどうかです。処理性能劣化の原因が単純にアクセス数の増加によるものか、他に例えばネットワーク構成などに潜在的な問題を抱えていたのかどうか。あるいは、販売を開始した直後からつながりにくくなったそうですから、システムには問題が無くても、DoS攻撃などのサイバー攻撃は無かったのか。この辺りは調査中とのことですが、可能であれば調査結果はシェアしてもらいたいところですね。


※ この記事は、先日公開した以下の音声コンテンツを基に編集したものです。


最後に、Web上でキャンペーンを実施する時の難しさについて考えてみたいと思います。今回、JALがタイムセールを中止した理由の一つに、「タイムセールのご予約以外のお客さまにも影響が及んでいる」という記述がプレスリリースに見られます。この文面だけですと、このキャンペーンサイトが他のシステムと同居していたか、同居していないとしても予約機能だけは共有していたために影響が出たと読めます。

私もかなり前にWeb上でのキャンペーンの企画を相談されたことがあります。その頃はまだクラウドコンピューティングが今ほど普及していなく、自前の限られたサーバリソースで賄わなければいけないという難しさがありました。その時は、一気にアクセスが集中するようなサービス設計は止めた方が良いとアドバイスしました。

今だったらキャンペーン用のシステムは認証以外の機能はクラウド上に分離して、一旦受付けたものをバッチ処理で本体に連携するようなことは考えられます。クラウドのメリットはコストではなく、リソースの増減が柔軟であることですので、アクセス状況を見ながら調整が可能です。もしクラウド上に機能を切り離すことが難しければ、早い者勝ちのタイムセールではなく、抽選で当たった人が安くなる方式にするとか、アクセスを平準化できるようなサービス設計が良いのではないかと思います。



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