プロジェクトに携わると必ずと言って良いほど「WBSを出して下さい」と言ったり言われたりします。WBSとはWork Breakdown Structureの頭文字をとった頭字語で、プロジェクトを計画する際によく使われるツールですが、多くの人はWBSを作る立場になる前に少なくとも1つ以上のWBSを見たことがあるのではないでしょうか。
ところが、自分がWBSを作る立場になると、WBSの作成は簡単そうに見えて意外と難しいということに気づくケースが多いように思います。少なくとも私はそうでした。
以前にも書いたように、たまたま参画したプロジェクトのPM(プロジェクトマネージャ、プロマネ)が「見える化」をしないタイプだとしたら、おそらくWBSは存在していない(作られていない)でしょう。そういうプロジェクトは概して無計画で、出たとこ勝負であり、ノリ重視であったりします。人生は出たとこ勝負で良いかもしれませんが、プロジェクトとなれば(当人がプロジェクトのオーナーで無い限りは)そういうわけにもいきません。そういう現場が好きな人以外は、そのようなプロジェクトに間違って参画してしまうとそれなりに苦しい時間を過ごすことになります。
「プロジェクトは計画通りにいかない」という人がいます。もちろんそのとおりだと思います。プロジェクトには大なり小なり想定外のイベントは付物で、事故と言ってもいいでしょう。しかし、だからといって計画を立てなくて良いということにはなりません。それは何故でしょうか。
WBSはプロジェクトの完了に必要な要素を全て洗い出したものです。多くの場合、洗い出した項目とガントチャートを組合せてスケジュール表として作成します。(以降、WBSといえばスケジュール表を兼ねているものを指す)だから、WBSがあれば、
- そもそも何をしなければならないか(全体の規模感)が分かるため、心構えができる。
- 何をいつから始めれば良いかが分かるため、気付いたら時間切れという事態を避けられる。
- 各作業の全体の中の位置付けが分かるため、次の作業を意識して取組むことができる。
- 先々の予定を把握することで、余裕を持って作業に取組むことができる。
- 結果的に、生み出す成果物の品質が高くなり、プロジェクトの成功確率が高まる。
…と、このようなメリットが期待できるのです。逆にWBSが無ければどうなるでしょうか。
- 何をしなければならないか「分かったつもり」になっているため、必要な項目が漏れる。
- 何をいつから始めれば良いか分からないため、項目を思いついた時点で既に時間切れの場合がある。
- 全体の中の位置付けが分からないため、1つの作業に没頭してしまい、目的と期限を見失う。
- 先々の予定が分からないので、差し迫ってない項目は放置し、差し迫ってから着手する。
- そのため、突貫工事で低品質の成果物を生み出し、高稼働でコスト増またはスケジュール遅延となる。
…と、このようなデメリットが想定されるのではないでしょうか。ここでは私の思いつく限りを列挙しましたが、きっと皆さんはそれぞれの状況下でそれぞれのメリット・デメリットを挙げることができるでしょう。突き詰めていくとWBSの有無がプロジェクトの成否だけでなくプロジェクトに関わる人たちに影響をもたらすと言えます。