AI技術(機械学習)を応用したAdobe製品群の進化

プロジェクトオーガナイザの吉田聖書よしだみふみです。

アメリカのアドビ本社が「Adobe MAX 2021」というイベントを現地時間の10月26日に開催し、自社製品群Creative Cloudの大型アップデートの内容を発表しました。

公式のニュースリリースはこちら。
アドビ、Adobe MAX 2021にて、「すべての人に『つくる力』を」を解放する次世代Adobe Creative Cloudを発表【2021年10月26日】

アドビと言えば、画像や映像などのクリエイター御用達の各種ツールを発売していることで有名ですが、今回はPhotoshopやIllustrator、Premiereをはじめとする各種の製品に、コンテンツ制作作業の生産性を劇的に向上させる機能の追加が発表され、そのことがSNSでも話題になっています。コンテンツ制作業界の人にとってはもはや当たり前だと思うんですが、アドビは数年前から、Adobe Senseiという機械学習の技術を製品に応用しています。ちなみにSenseiというのは日本語の「先生」から来ているそうです。

例えばPhotoshopの場合、いままでは「投げ縄」という機能を使うと、写真に写っている物体の境界線を識別して、物体を構成するピクセルを選択することができました。もちろんこれだって素晴らしい機能であり、クリエイターの生産性を向上させた技術ではあるのですが、今回発表された「ホバー選択」という機能を使うと、写真に写っている物体にマウスカーソルを重ねるだけで物体を認識し、ワンクリックで選択することができるようになるということです。私はPhotoshopは学生時代にちょっと触ったぐらいでしたし、当時の投げ縄機能もそんなに精度が良かったという感じはしなかったんですが、このホバー選択機能は素人の私でも正直凄いと感じます。

もう一つPhotoshopで追加される目玉機能はニューラルフィルターです。ニューラルというのはおそらくニューラルネットワークのニューラルだと思うんですが、ニューラルネットワークというのは機械学習・深層学習のベースとなっている理論ですので、ニューラルフィルターというのは機械学習の技術を応用したフィルターということになろうかと思います。今回はベータ版としつつも、興味深いフィルターが紹介されています。例えば2枚の風景写真を合成して全く新しい風景写真を作るという機能。これは組合せによっては季節や時間帯といった写真が放つ雰囲気をガラッと変えることができる面白いフィルターです。他にも物体と背景を合成した時に、前景が背景と調和するように前景のカラーリングを調整する機能とか、いままでだったら個別にコツコツと調整しなければいけなかったところがフィルターを適用するだけで完了できてしまうということです。


※ この記事は、先日公開した以下の音声コンテンツを基に編集したものです。


更にもう一つの目玉機能として、コンテンツ・クレデンシャル(Content Credentials)というものがあります。これまでは帰属情報などはただのメタ情報としてデータに埋め込んでいましたけど、それは簡単に書き換えることができます。それは良くないということで、帰属情報を書き換えられても復元できる機能を実現したということです。これ、最近話題のブロックチェーンの技術を応用しているようなんですが、コンテンツの権利が守られるように、デジタルデータの帰属と編集履歴といった情報を登録し保護することができるようになったということなんですね。

似たような仕組みとしてDRM(デジタル著作権管理)が連想されます。DRMはどちらかというとソフトウェアやサービスを提供する事業者が独自で仕組みを構築していて、方式は各社でバラバラだったと思います。それが今回のコンテンツ・クレデンシャルではコンテンツ認証イニシアチブというプロジェクトを立ち上げて、この仕組みが会社横断で共通機能として利用できるような体制を構築したのだそうです。これはかなり本気度を感じますね。

最後に、機械学習とは関係ありませんが驚いたニュースとして、PhotoshopとIllustratorに限りWebブラウザ版を提供すると発表しました。パソコンにインストールしなくても使えるようになったという点と、ライセンスを保持していなくてもデータの閲覧ができるという点が新しいです。これまではライセンスを持っていない場合、「.ps」「.ai」といったファイルを開こうとすると、フリーソフトに頼らざるを得なかったのですが、オフィシャルな手段を用いて閲覧ができるようになるのですね。今後はPDFのような扱いになっていくのでしょうか。



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