小田急ロマンスカー、指定席券の予約システムを使って業務妨害?

プロジェクトオーガナイザの吉田聖書よしだみふみです。

今日は、小田急電鉄のロマンスカーの予約とキャンセルを9千回以上繰り返した人が警視庁に書類送検されたというニュースを取り上げます。

ロマンスカー虚偽予約の疑い 「嫌がらせ」9千回か、書類送検(2022/7/13 共同通信社)

先週13日に、小田急電鉄のロマンスカーの予約とキャンセルを9千回以上繰り返した人が警視庁に書類送検されました。上記でリンクした共同通信のニュースによると、容疑は小田急ロマンスカーの特急券の予約とキャンセルを、昨年の3月から11月にかけてオンラインで約9,300回も繰り返して業務を妨害したことだそうです。

9,300回ってすごいですよね。3月から11月だと9か月、だから1か月で約1,000回。1か月を30日で計算すると、1日当たり約33回。まあ、やろうと思えばできなくはないというレベルですかね。目的は腹いせのための嫌がらせだそうですが、余程こじらせたんでしょうね。

何でこういうことが起きるのかということを少し思いめぐらしてみました。もちろんそういうことをするというのは論外なんですが、利用規約で禁止したところで防げるものではないですよね。小田急電鉄側の立場に立つと、業務を妨害されて困ったのであれば、何とか妨害されない手立てを講じたいと考えるのが普通です。

まず、小田急ロマンスカーのオンライン予約ですが、インストラクション、利用方法の案内を見る限り、電話番号とメールアドレスを入力する必要はあるんですが、ログインしないで(つまりアカウントを作らないで)予約できるようなんですね。で、予約したら購入すると思うじゃないですか、ところが予約だけ行って購入つまり決済は保留することができるようです。今回の容疑者はその機能を悪用して予約とキャンセルを繰り返したということなのでしょう。

インストラクションだけ見てもあまり気付くことは無いかもしれませんが、他のオンライン予約サービスと比較すると気付くことは多いと思います。ある鉄道会社では、まず予約をするのにアカウントを作ってログインする必要があります。そこが大きな違いです。ログインをさせるということは、全ての操作の記録が残せますから、怪しい動きを検知すれば(自動か手動かは別として)アカウントを凍結するということが可能です。(実際に凍結することがあるかどうかは不明です。)

何故、小田急電鉄がログインなしでオンライン予約ができるようにしたのかは分かりません。もしかしたら利便性のためかもしれませんが、一応電話番号とメールアドレスは入力させるようになっているものの、本人確認の目的では使用してなさそうです。ただ、容疑者を特定できたということは、容疑者が同じ電話番号とメールアドレスを入力し続けたために、結果として本人が特定できたということなのかもしれません。


※ この記事は、先日公開した以下の音声コンテンツを基に編集したものです。


何でシステムがそういう作りになっているのだという問いを突き詰めていくと、開発者の立場からすると「そのような要件が無かったからだ」ということになってしまいます。そのような要件が無かったのは、もともとそういう要求が無かったために要件に落とし込めなかったのか、あるいは要求はあったんだけれども、優先順位の問題でスコープから外れたのかのどちらかなのだろうと推測します。

社内システムの場合は、ある程度利用者の善意に頼った仕様にすることがあります。(もちろん悪意があったところで大したことができないシステムに限られますが。)一方で、一般公開システムの場合は、利用者の善意に頼った仕様は好ましくないと思います。

今回の小田急電鉄の場合、「本人が利用する以上の座席を予約するような行為」はポリシーとして禁止していますので、例えば1日に2往復以上するような予約は抑止するとか、あるいは一度に予約できる上限を設け、それを超えて追加で予約するには先に予約した分を決済しなければいけないようにするとか、普通にロマンスカーを利用する人にはほとんど影響のない範囲でシステム的に制限をかけることは可能でしょう。

まあ、それもビジネスオーナーが明確にそのような要求を出すというところから始まりますね。



関連記事

プロマネの右腕

クロスイデアでは、新サービス・新ビジネスの 立上げや計画を中心に
プロジェクトマネジメントの支援を行っています。

新サービスの企画を任されたけど どう進めていいか悩んでいる担当者、
部下に新しい企画を任せたけど このままで大丈夫か不安な管理職の方、
以下のサイトをご参照ください。
https://www.crossidea.co.jp/services/right-hand-pmo.html

YouTubeにて動画配信中!

プロジェクトマネジメントのノウハウを
YouTubeで配信しています。
ブログと併せてご活用ください。

Comments are closed.