Twitter変革で考えるSNSのビジネスモデルと品質

プロジェクトオーガナイザの吉田聖書よしだみふみです。

先月末の10月27日に、イーロン・マスク氏によるアメリカのTwitter社買収が成立しまして、11月8日に株式が上場廃止となりました。その直後、赤字体質を立て直すために大規模な整理解雇をしたこと、そしてそれによる影響についてはもうすでに皆さんよくご存じのことと思います。

ここで同じことをただ繰り返しても意味がありませんので、今回はこの一連のニュースを通して「SNSのビジネスモデル」「SNSの言論空間としての品質」について私が感じたことをお伝えしたいと思います。

私はTwitterを2010年9月、Facebookをほぼ同時期の2011年1月に登録して使い始めました。それ以前のSNSはというと、2004年頃に高校の友人から招待されてMixiとGREEに登録して、Mixiの方はしばらく使っていました。いずれも最初の頃は招待制だった気がします。それに対してTwitterやFacebookは誰でも(招待を受けなくても)登録できたという違いがあります。

どのSNSでも、使い始めた頃は内輪の投稿やコメントも多く、牧歌的で居心地も良いのですが、一方で「これってどうやって儲けるのかなぁ」って漠然と考えていました。そのうち徐々に広告が付いたり、仕様が変更されたり、機能が増えたりして使いづらいものになっていく傾向がありますが、運営母体もビジネスである以上、続けるためには当然収益を上げ続けなければいけません。そして、多くの場合、ユーザーをよりたくさん集めたいのでフリーミアムモデル(広義でユーザーに課金するモデル)よりも広告モデルが採用されがちです。

そうなると、運営会社にとっての顧客は我々一般ユーザーはではなくて広告主となるので、運営会社はユーザーのことよりも広告主の都合を優先します。一般ユーザーはある意味ただ乗りしているだけなので仕方がないことかなと思います。まあ、ただこれはSNSに限らず、テレビやフリーペーパーなど広告モデルを採用しているメディア全般に言える話です。

Twitterについて言えば、今後広告の依存度を現在の約90%から50%未満まで下げるということをマスク氏が述べているようですので、広告モデルに頼ることの限界を認識した上で、ビジネスモデルを見直すことを考えているのではないかと推測します。

(参考記事)
Inside Elon Musk’s Big Plans for Twitter(2022/5/6公開、2022/10/28更新 New York Times)

そうした時に、フリーミアムでもいいし、もうちょっとユーザーに課金してもいいのかなと思える部分もあります。SNSはユーザーがいないと始まらないので、最初は無料にしてとにかくユーザーを集めるという活動をしてもいいと思います。でも、無料の状態を続けていると、ボットとか偽アカウント、捨てアカウントといったSNSの品質低下を招きかねないアカウントの存在を許すことになります。

課金によって落書きのような誹謗中傷をするだけの匿名アカウントは減るかもしれませんが、SNSを言論空間と捉えた場合に、その品質を維持するためには課金だけでは不十分だと思います。というのも、プロパガンダを流そうとする組織にとって料金は必要経費に過ぎないからです。量より質に移行するのであればカギはKYCではないかと考えます。


※ この記事は、先日公開した以下の音声コンテンツを基に編集したものです。


KYC(Know Your Customer)は日本語では「本人確認」と呼ばれることがありますけれど、銀行口座を作る時とか、婚活サービスに入会する時とか、行政手続きを行う時などに行われることがあります。要は「なりすまし」をできるだけ防ぐということですよね。SNSでも匿名が良いか実名が良いかといった議論がありますが、実名を表示するかどうかは別として、運営会社に実名を登録した上で本人確認を受けないとサービスを利用できない形式にしてはどうかということです。

そんなことしたらユーザーが減るという意見もあると思います。それは水増しされている分が減るだけであって、そのサービスに価値があれば登録時のKYCなんて大した手間ではないのではないでしょうか。法人のアカウントに対しても(現在のTwitterには法人アカウントという概念がないかもしれませんが)、きちんと登記簿謄本や印鑑証明などを提出させてはどうかと思います。国境を超えるとKYCはハードルが上がるので、そこは各国の現地法人が実施するということで良いかと思います。

SNSの文脈の中で「言論の自由」が叫ばれることがありますが、少なくとも実名を登録させることで言論の自由が失われることはありません。もし、SNSを言論空間とするのであれば、運営会社にはしっかりとKYCを実施して、ユーザーの責任ある発言・投稿によってその品質が維持されるように努めていただきたいものです。



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