サービス終了のベストタイミングはいつなのか――GYAO!終了発表に際して

プロジェクトオーガナイザの吉田聖書よしだみふみです。

1月16日に、Zホールディングス株式会社とそのグループ会社数社が連名でプレスリリースを出しまして、動画配信サービスのGYAO!を今年の3月末で終了すると発表しました。

「GYAO!」サービス終了のお知らせ~ 縦型ショート動画サービス「LINE VOOM」へ動画領域のグループ経営資源を集中 ~
(2023年1月16日 Zホールディングス株式会社、他)

これはかなり大きく報道されたので、ほとんどの方が既にご存じかと思います。私はGYAO!を利用したことが無いので、私にはGYAO!のサービスそのものを語る資格はありませんが、サービスのやめ時の難しさについて書いてみたいと思います。

サービス終了の理由はGYAO!に投じているリソースを、ショート動画サービスの「LINE VOOM」に集約するためとのことです。どちらを起点に見るかで変わってきますが、VOOMを起点にした場合、事業を推進していくためにはリソースが不足しており、それを補うのに採用を増やすのではなくて、グループ内での人員再配置で対応したのだというストーリーが想定されます。その時、グループ全体を見渡して将来の事業性を評価してGYAO!の終了が選択された可能性はあります。逆にGYAO!を起点にすると、そもそも不採算のために閉じたいというビジネス要求が元々あって、かといってレイオフするわけにいかないので受入先をグループ内で探したというストーリーが考えられます。

GYAO社からは利用者数の推移が公表されているわけではないので、勝手な推測になってしまいますが、可能性として元々不採算だったということも考えられなくもない。ただ、個人的にはその可能性は低いかなと感じます。それよりはここ数年で様々な動画配信サービスが登場してきていて、それらの競合他社のサービスと比較すると、どうしてもサービス品質が良くないと利用者が判断するようになったということなんだろうなと思います。例えば、GYAO!は日本国内でしかサービスを受けられないとか、Windowsパソコンにしか対応していないなど、かなり大きなハンデを背負っていると感じます。

サービス提供側の立場として、中には最後の一人が解約するまではサービスを続けるべきだという美学を持っている人もいます。しかしそれはそのサービスのコストを負担できるだけの潤沢な資金があっての話です。そうでなければ、不採算になったら大けがをする前に撤退する、あるいは実際に不採算になる前に下降トレンドを読んで撤退するパターンがほとんどかと思います。ただ、そのためには撤退戦略――どうなったら撤退するというシナリオをあらかじめ織り込んでおくということが求められます。「最後の一人が…」という考え方の裏に、適切な撤退戦略を思い描けない弱み、あるいは、撤退という発想そのものへ嫌悪や卑下が隠れているのではないでしょうか。

そういう意味では今回の撤退は潔いとは思いますが、終了の告知から実際の終了日までの期間が2か月半とかなり短い印象を受けましたよね。上述したように具体的にどのような背景があり、どのような判断がなされたのか分かりませんけれども、通常はステークホルダへの影響を考えて半年とか1年とか余裕をもって告知するものだと思っていました。そういうことを考えると、今回はかなり急を要する、つまりステークホルダへの配慮を優先している状況ではなく、まず今すぐにでも止血しなければいけない状況だったのかなと推測します。


※ この記事は、先日公開した以下の音声コンテンツを基に編集したものです。


ところで、コンテンツサービスの形態として、大きくダウンロード型とストリーミング型に分けられます。私個人はダウンロード型の方が好きなんですけれども、世の中のトレンドはストリーミング型に寄って行っていますよね。例えば、iTunes Storeは好きな楽曲を自分のデバイスにダウンロード出来て、ウォークマンに転送して聴くということができます。でも、Apple社はApple Musicというストリーミング型のサービスを推してきています。

サービス提供側に立てば、ダウンロード型の方が単純なファイル転送なのでサーバーに負荷がかからないだろうなと思います。でも権利のコントロールをしやすいのはストリーミング型なんですよね。だから版元との契約が切れたらそのコンテンツは観賞できなくなるわけです。

一方、サービス利用側に立てば、昔はお店で現物を購入して所有するということをしていました。それだとだんだん収納スペースがなくなっていくのでインターネットからダウンロードして観賞するようになりました。すると今度はストレージがどんどん必要になってきます。そして端末だけあれば観賞できる方式としてのストリーミングが主流になってきたと考えることもできます。

ただ、自分がお金を出して買ったものは、少なくとも自分が死ぬまでは自分のものと思いたいところがあります。コンテンツのファイルが自分の手元に無くても自分が見たい時にいつでも観賞できるという前提でお金を払っている人もいるでしょう。その権利がサービス終了に伴って消えてしまうということに納得いかない部分もあります。そういう人は以前のように現物を購入するか、ダウンロード型のサービスを利用するというスタイルを選んでいくことになるのかなと思いました。



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