デジタル庁が主導する「引越しワンストップサービス」どこまで期待できるのか?

プロジェクトオーガナイザの吉田聖書よしだみふみです。

(今週月曜日の)6月20日に、デジタル庁が「引越しワンストップサービス(以下、引越しOSS)」についてのプレスリリースを出しました。

プレスリリースはこちら。

引越しワンストップサービス マイナポータルを通じた転出届・転入(転居)予約開始に向けた検討会及び検証等に協力いただく自治体が決まりました(2022/6/20 デジタル庁)

それによると、引越しOSSの開始に向けて、検討・検証に参加協力する自治体が決定したということです。

そもそも、色々と私も知らなかったことがいっぱいあります。まず、引越しOSSというサービスを導入するという政府の計画があるそうです。いつ企画されたものかは分からないのですが、2018年とか2019年頃から構想自体はあったようです。それが、昨年デジタル庁が発足して、マイナポータルを絡めた仕組み作りを推進することになったようです。

引越しワンストップサービス
https://www.digital.go.jp/policies/moving_onestop_service/

マイナポータルというのは、マイナンバーを利用した行政手続きのオンライン窓口です。なので、引越しOSSは最初マイナポータルで手続するのかなと思いました。その場合、マイナポータルから行政機関と民間のサービスに連携するというイメージです。でもデジタル庁のWebサイトを見るとそうなっていませんでした。

システム概要図を見ると、私たち一般利用者が手続きを行うポータルサイトは民間事業者に構築してもらう想定です。システム概要図ではそれを「引越しポータル」と呼んでいます。そして、その民間が構築する引越しポータルで引越し手続きを行うと、裏で自治体と民間サービスに対して住所変更の手続きが行われるという仕組みです。そのうち、引越しポータルから自治体に対する手続きをマイナポータル経由で行うということです。

ところで、マイナポータルに引越しOSSの機能を追加するにあたって、仕様の検討やサービス開始前の検証が必要です。もちろんデジタル庁主導で行うのですが、利用部門が参加していた方が現場の課題や意見を吸い上げることができます。そこで、デジタル庁は先月、検討や検証に参加してもらえる自治体を公募しました。それはすでに6月10日で締め切られていまして、協力する39の自治体が決定したというのが今回のプレスリリースの内容です。

Webサイトを辿っていくと、令和4年度中(つまり今年度中)にすべての市区町村で、引越しOSSを開始する計画のようです。意外とスピーディですね。

ただ、デジタル庁が公開している資料を読んでいて気になる点がありました。2つありまして、1つは、この引越しOSSを利用したとしても、転居先の役所に1回は行かなければいけないということです。まあ、本人確認をするということと、個別にヒアリングしなければいけないケースもあるのでやむを得ないのでしょう。Web会議だと本当に転居したのか分からないですからね。


※ この記事は、先日公開した以下の音声コンテンツを基に編集したものです。


そして気になる点のもう1つは、デジタル庁がカバーするのはマイナポータルから後ろの仕組みだけであるということです。先ほど、引越しポータルは民間事業者が構築する想定とお伝えしました。デジタル庁は、マイナポータルにアクセスするためのAPIは提供するようなのですが、引越しポータルから民間サービスへのアクセス手段は提供しないようです。

システム概要図を見る限り、引越しポータルのサービス事業者は、民間サービスの住所変更手続きを、オンラインとはいえ手作業で実施する想定のようです。ということは、引越しポータルの利用にはコストがかかるということですよね。実際利用するかどうかは料金設定によりますかね。しかも、本当にワンストップでできるのか、つまり、手続漏れがないということをどうやって担保するのかも疑問です。

例えば、引越しする人が利用している民間サービスを全て引越しポータルにまず伝えなければいけません。50件のサービスを利用している人であれば50件漏れなく伝える必要があります。そこで漏れたらアウトです。漏れた分は自分で手続きをする必要があります。そこで漏れなかったとしても、引越しポータルが対応していないサービスが有ったらアウトですし、または民間サービスが代行での住所変更を受け付けなかったらアウトです。

それだったら、引越しポータルを通さないでマイナポータルにアクセスしますね。行政手続きだけでもワンストップになればありがたいです。もちろん行政手続きの中には上下水道とか運転免許証の住所変更も含まれますよ。庁舎内の窓口を巡回しなければいけないのも大変ですが、離れた場所にある別の役所に行かなければいけないというのも大変なので、「警察署と税務署はこのサービスの対象外です」みたいな話は勘弁してもらいたいですね。



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