オンライン資格確認に向けた事務作業のミスとその解決法

プロジェクトオーガナイザの吉田聖書よしだみふみです。

このブログでもマイナンバーに関わるトラブルについては何度か採り上げてきました。最初はコンビニの証明書交付サービスについて、住民票のトラブル、戸籍謄本のトラブル、そして印鑑登録証のトラブルがありました。それから公金受取口座の登録ミスがありましたね。そして今回、オンライン資格確認といって、マイナンバーカードを健康保険証として利用する仕組みがあるのですが、マイナンバーと被保険者の紐づけを誤ったというトラブルを取り上げたいと思います。

私が辿れた一次資料は、デジタル庁で開催されている「マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会」という会議の、今年の2月17日に行われた第2回の配布資料です。

マイナンバーカードと健康保険証の一体化に関する検討会(第2回)(2023/2/17 デジタル庁)

ここの参考資料の17ページ目(数字が消えていますが)に、保険者が、被保険者の情報に別人のマイナンバーを登録してしまった件数が記載されています。良くニュースなんかで取り上げられている件数でいうと、一昨年の12月から昨年の11月までの間で7,279件だったそうです。

それを受けて、厚生労働省が5月にお知らせを掲載しまして、そのお知らせから読み取る限り、本来は氏名、生年月日、性別、住所の4情報が一致しなければ登録してはいけないというルールだったのに守られていなかったためにトラブルが発生したということです。さらには被保険者が資格取得の申請をする際に必ずしもマイナンバーが記載されていないことがあり、その場合は、保険者の事務員が自力で調べてマイナンバーを登録していたということです。それはさすがに時間もかかるし間違いも起こりますよね。

オンライン資格確認における資格情報の誤登録について(厚生労働省)

そこで今後は、被保険者になろうという人にマイナンバーの提出を義務化するとともに、保険者がデータを登録する時にちゃんと住民基本台帳を照会して、「5情報(漢字氏名・カナ氏名・生年月日・性別・住所)が一致した場合にのみ資格情報を登録することを保険者に徹底した」と記載されています。同じ漢字表記でも読み方が異なる場合も当然ありますから、そこまで含めてちゃんと確認せよということですね。

この問題は論点がいくつかあると思っていて、それを解説していきたいと思います。

1つ目は、デジタル情報を連携するのに、申請書への記入とそれをシステムに手入力というアナログな方式が取られている点です。この点については私は以前からモヤモヤしていまして、人力による「転記」方式を採用している限り、登録ミスはゼロにはなりません。その前提で、そのミスにすぐに気付ける仕組みをどう構築するかがカギになろうかと思います。

2つ目は、同姓同名の問題です。どうやら、氏名、生年月日、性別が一致する人というのが一定の割合でいるようです。なので、マイナンバーが記載されていない人を被保険者として登録しようとした時に、「住所はちょっと違うけどきっとこの人だろう」と判断して違う人のマイナンバーを書いてしまうということがあったのだと推測されます。だからこそ漢字氏名のほかにカナ氏名も含めた5情報の一致が必須となったわけです。

これは漢字は同じでも読み方が違う可能性があるため、間違う確率を多少減らす効果はあると思いますが、どうなんでしょう。一般的なシステムであれば、生年月日と氏名で一意制約を付けてしまいたくなります。すると、同じ日に生まれた人は同じ氏名を届けることができなくなるので、重複は無くなりますが、後から届けた人はせっかく考えた名前を考え直さなければならなくなるため、もっと大きな問題になりますよね。

これは私案ですが、今後出生する人は誕生日の精度を年月日ではなく、年月日時分まで拡げてはどうかと思っています。出生届には生まれた年月日時分を記載するようになっていますが、現在は、そのうちの年月日の部分だけが生年月日として使われるので、それを時分まで拡げたらというアイデアです。そうすれば同姓同名で混乱する確率はグンと減らせるのではないかと思います。


※ この記事は、先日公開した以下の音声コンテンツを基に編集したものです。


3つ目は、前回の記事とも関連がありますが、住所のデジタル化です。現在は、住所Aと住所Bが同じかどうかを文字列として照合しています。名寄せのためにある程度の正規化はしていると思いますが、それでも完全ではないというのが前回のテーマでした。それを解消するために様々な試みがあるということですが、その中でも有力視されているのが不動産IDです。ですが、分筆とかあると変わってしまうので、そうではなく、今の住所全てにユニークなIDを振って、つまり住所を符号化してしまうのが良いのではないかと考えています。

ただ、それはコードを住所の代わりにするということではなく、銀行口座を表す時に金融機関名・支店名に加えて金融機関コード・支店コードを添えるように、各種申請書に今までの住所とは別に住所コード欄を設けて、システム的には住所コードで照合するという意味です。その場合、建物や号室も含めた住所に対してユニークなコードを払い出すということです。今だと同じ住所に複数の建物が建っていることもありますけれども、それらも別々のコードを振る必要があります。

イメージとしては郵便番号の拡張ですね。郵便番号は現在は7桁ですけれども、例えばそれを15桁とか充分賄える桁数に拡張してしまうということです。文字列で表現した場合、同じ住所でも複数の表記があり得るので、照合する時に混乱が生じます。でも、コードで照合することにすれば、文字列の住所は各地域の文化を尊重した表記を維持したとしても、システム的には全く問題ないということになります。



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